整形外科で「肋軟骨炎」と診断された後、そのつらい痛みから解放されるためには、どのような治療が行われるのでしょうか。肋軟骨炎は、基本的には自然に治癒する良性の病気であるため、治療の主眼は、炎症を鎮め、痛みをコントロールし、体が自然に回復するのを助けることに置かれます。治療法は、症状の重さや持続期間に応じて、段階的に選択されます。まず、治療の基本であり、最も重要なのが「安静」です。痛みの原因となっている胸郭への物理的な負担を減らすことが、回復への第一歩です。医師からは、痛みを誘発するような動作、例えば、重い物を持つ、ゴルフなどのスポーツ、激しい筋力トレーニングなどを、痛みが治まるまで控えるように指導されます。咳が原因の場合は、咳を鎮める治療が優先されます。次に、痛みを和らげるための「薬物療法」が行われます。一般的には、ロキソプロフェンやジクロフェナクといった、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の飲み薬や、湿布、塗り薬が処方されます。これにより、炎症を抑え、痛みを緩和します。ただし、胃腸への副作用があるため、医師の指示通りに服用することが大切です。これらの保存的治療を行っても、痛みがなかなか改善しない、あるいは日常生活に大きな支障をきたすほど痛みが強い場合には、より強力な治療法として「局所注射」が検討されます。これは、痛みの原因となっている肋軟骨の周囲に、直接、局所麻酔薬や、少量のステロイド薬を注射する方法です。ステロイドの強力な抗炎症作用により、痛みが劇的に改善することが期待できます。外来で簡単に行える処置ですが、複数回の注射は推奨されません。そして、これらの治療を全て行っても、数ヶ月以上にわたって頑固な痛みが続き、生活の質が著しく損なわれている、ごく稀な難治性のケースでは、最終的な選択肢として「手術」が考慮されることもあります。これは、炎症を起こしている異常な肋軟骨を部分的に切除するというもので、専門的な施設でのみ行われます。ほとんどの肋軟骨炎は、安静と薬物療法で軽快します。焦らず、医師の指導のもと、適切な治療を続けることが大切です。