「熱が出たくらいで、病院に行くのは大げさかな」「一晩寝れば治るだろう」。多くの人が、発熱に対してこのように考えがちです。確かに、ほとんどの発熱は、数日で自然に回復する風邪などが原因です。しかし、中には、その背後に一刻を争う、命に関わる病気が隠れていることもあります。様子を見ているうちに、手遅れになってしまうことだけは、絶対に避けなければなりません。ここでは、単なる発熱とは一線を画す、「すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診すべき」危険なサインについて解説します。以下の症状が、発熱と同時に一つでも見られた場合は、絶対に我慢したり、朝まで待ったりしないでください。意識がおかしい:呼びかけへの反応が鈍い、話のつじつまが合わない、意味不明なことを言う、ぐったりして意識が朦朧としている。けいれん(痙攣)を起こした:白目をむいて、手足を突っ張ったり、ガクガクと震わせたりする。経験したことのないような激しい頭痛:まるでハンマーで殴られたかのような、突然の激しい頭痛。呼吸が異常に苦しい:肩で息をしている、横になれないほど息が苦しい、顔色や唇の色が悪い(紫色)。激しい胸の痛み:胸が締め付けられるような、圧迫されるような強い痛みで、冷や汗を伴う。激しい腹痛:体を動かせないほどの、経験したことのないようなお腹の痛み。何度も嘔吐を繰り返し、水分が全く摂れないこれらのサインは、それぞれ、髄膜炎や脳炎、くも膜下出血、重篤な肺炎や心不全、心筋梗塞、あるいは腹膜炎といった、緊急性の高い病気の可能性を示唆しています。特に、高齢者や、糖尿病、心臓病といった持病のある方、あるいは免疫を抑える薬を飲んでいる方は、感染症が重症化しやすいため、より一層の注意が必要です。また、子供の場合は、上記に加えて「ぐったりして元気がない」「顔色が悪い」「水分を受け付けない」といった状態も、危険なサインと捉えるべきです。発熱は、体からの重要なメッセージです。そのメッセージに、「緊急事態」を知らせるアラームが加わっているかどうかを、冷静に見極めること。それが、あなたや、あなたの大切な人の命を守ることに直結するのです。