下肢静脈瘤の治療を受けようと決めた時、インターネットで検索すると、「血管外科」「皮膚科」「形成外科」など、複数の診療科が候補として挙がってきます。それぞれに特徴があり、どの科を選ぶかによって、受けられる治療法も変わってくることがあります。後悔しない病院選びのために、それぞれの診療科の役割と特徴を理解しておきましょう。まず、下肢静脈瘤の診断と治療における、最も専門性の高い診療科が「血管外科(心臓血管外科)」です。血管外科は、血管の病気のスペシャリストであり、下肢静脈瘤の根本原因である「静脈の逆流」を診断するための超音波(エコー)検査や、治療の全ての選択肢(圧迫療法、硬化療法、血管内治療、手術)に対応できる、まさに中心的な存在です。特に、レーザーや高周波カテーテルを用いて、皮膚を切らずに内側から逆流している静脈を焼き固める「血管内焼灼術」は、現在の下肢静脈瘤治療の主流となっており、この治療は、専門的な知識と技術を持つ血管外科医が最も得意とする分野です。症状が進行している場合や、根本的な治療を望む場合は、まず血管外科を受診するのが最も確実な道と言えます。次に、「皮膚科」です。皮膚科は、皮膚に現れた症状を診る専門家です。足の血管が浮き出て見える、という見た目の問題や、静脈瘤が原因で起こる皮膚炎(うっ滞性皮膚炎)や色素沈着、皮膚潰瘍といった、皮膚合併症の治療を得意としています。比較的小さな、クモの巣状や網目状の静脈瘤に対して、薬剤を注入して血管を固める「硬化療法」を行っているクリニックも多くあります。ただし、大きな静脈瘤の根本原因である、太い静脈の逆流に対する血管内治療や手術は行っていないことがほとんどです。そして、「形成外科」です。形成外科は、体の表面の形や見た目を、より正常に、より美しく整えることを専門とします。下肢静脈瘤に関しても、美容的な観点からのアプローチを得意としており、硬化療法や、小さな切開で静脈瘤を切除する「スタブ・アバルジョン法」などを行っている施設があります。結論として、選び方のポイントは「何を求めるか」です。根本的な原因からしっかりと治したいなら血管外科へ。皮膚のトラブルや、見た目の軽い改善を求めるなら皮膚科や形成外科へ。近年では、「下肢静脈瘤日帰り手術クリニック」といった、この病気に特化した専門施設も増えています。