下肢静脈瘤は、一度発症すると自然に治ることはありません。しかし、日々の生活習慣を見直し、適切なセルフケアを実践することで、症状の悪化を防いだり、新たな静脈瘤ができるのを予防したりすることが可能です。足の健康を守るために、今日から始められる簡単な習慣をご紹介します。まず、最も効果的なセルフケアが「弾性ストッキングの着用」です。これは、足首の部分の圧力が最も強く、上に向かうにつれて圧力が弱くなるように設計された、医療用の特殊なストッキングです。これを履くことで、外側から足を圧迫し、筋肉のポンプ作用を助け、血液が足に溜まるのを防ぎます。特に、長時間の立ち仕事やデスクワークの際には、着用することで、夕方のむくみやだるさが劇的に改善します。ドラッグストアでも購入できますが、できれば医療機関で、自分の足のサイズに合った、適切な圧力のものを選んでもらうのが理想です。次に、重要なのが「ふくらはぎの筋肉を意識的に動かす」ことです。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、その筋肉が収縮することで、足の血液を心臓へと力強く送り戻します。長時間の立ち仕事やデスクワークの合間に、かかとの上げ下ろし運動(カーフレイズ)をしたり、足首をぐるぐると回したりするだけでも、血行は大きく改善されます。また、一時間に一度は、少し歩き回るように心がけましょう。ウォーキングや水泳などの、適度な運動を習慣にすることも、非常に効果的です。日常生活では、「足を心臓より高くして休ませる」時間を作りましょう。夜、寝る時や、テレビを見ながらくつろいでいる時に、足の下にクッションや座布団を置いて、足を少し高くしてあげるだけで、足に溜まった血液がスムーズに心臓へ戻っていきます。また、体を締め付けるようなきつい下着や、ハイヒールは、血行を妨げる原因となるため、できるだけ避けるのが賢明です。食事では、便秘を防ぐために、食物繊維を多く摂ることを心がけましょう。排便時の強いいきみは、腹圧を上げ、静脈への負担を増大させます。これらの地道なセルフケアは、すぐに劇的な変化をもたらすものではありません。しかし、根気よく続けることが、あなたの足の健康を生涯にわたって支える、何よりの力となるのです。