大人がおたふくかぜに感染してしまった場合、つらい症状を乗り切り、合併症のリスクを減らすためには、適切な療養とセルフケアが非常に重要になります。おたふくかぜにはウイルスを直接退治する薬はないため、自分自身の免疫力がウイルスを打ち負かすのを、静かにサポートしてあげることが治療の基本です。まず、何よりも優先すべきは「絶対安静」です。高熱と強い倦怠感は、体がウイルスと全力で戦っているサインです。仕事や家事は完全に休み、とにかく体を横にして、エネルギーの消耗を最小限に抑えましょう。無理に動くと、体力を消耗し、回復が遅れるだけでなく、髄膜炎や精巣炎といった合併症を誘発するリスクを高めてしまいます。次に重要なのが、「水分補給」です。高熱で大量の汗をかくため、脱水症状に陥りやすくなります。水やお茶、経口補水液などを、こまめに摂取することを心がけてください。そして、多くの人を悩ませるのが、耳下腺の痛みによる「食事困難」です。口を開けたり、物を噛んだりすると激痛が走るため、食事を摂るのが非常につらくなります。この時期は、栄養バランスよりも、まず「口にできるものを摂る」ことを最優先に考えましょう。おかゆや、よく煮込んだうどん、ゼリー、プリン、ヨーグルト、アイスクリームといった、あまり噛まずに済む、喉越しの良いものがお勧めです。また、唾液の分泌を促す、レモンや梅干しといった「酸っぱいもの」は、唾液腺を刺激して激痛を引き起こすため、絶対に避けてください。痛みを和らげるための工夫としては、腫れている耳下腺のあたりを、冷たいタオルや冷却シートで「冷やす」と、心地よく感じ、痛みが少し和らぐことがあります。入浴は、体力を消耗するため、熱が下がって体調が落ち着くまでは、控えるのが賢明です。そして、おたふくかぜは、学校保健安全法で「出席停止」が定められている感染症です。耳下腺の腫れが現れてから五日が経過し、かつ全身状態が良好になるまでは、他の人にうつしてしまう可能性があるため、外出は厳禁です。つらい時期ですが、焦らず、じっくりと体を休ませることが、回復への一番の近道となるのです。
「おたふくかも?」と思った時の正しい過ごし方