「ワクチンは子供が打つもの」というイメージが強いかもしれませんが、おたふくかぜのワクチン(ムンプスワクチン)に関しては、子供の頃に接種する機会を逃してしまった大人にとっても、その接種には非常に大きな意義があります。特に、過去におたふくかぜにかかった確証がなく、ワクチン接種歴も不明な方は、今からでも接種を検討することを強くお勧めします。その理由は、大きく三つあります。第一に、「自分自身を、重症化と深刻な合併症から守るため」です。前述の通り、大人がおたふくかぜにかかると、高熱や激しい痛みで重症化しやすく、髄膜炎や、男性不妊の原因となる精巣炎、そして回復不能なムンプス難聴といった、人生を左右しかねない合併症を引き起こすリスクが、子供に比べて格段に高くなります。ワクチンを接種することで、これらのリスクを、九割以上も減らすことができるのです。ワクチン接種は、未来の自分に対する、最も確実な健康投資と言えます。第二に、「自分の大切な家族や、周りの人々を守るため」です。もし、あなたがおたふくかぜに感染すれば、あなたは感染源となり、まだ免疫を持っていない他の人にウイルスをうつしてしまう可能性があります。特に、妊娠初期の女性や、免疫力が低下している高齢者、そして、まだワクチンを接種できない年齢の赤ちゃんなどが身近にいる場合、あなたが感染源となることで、彼らを危険に晒してしまうことになるのです。ワクチンを打つことは、社会の一員としての、重要な責任でもあります。そして第三に、「接種の安全性が高い」ことです。おたふくかぜのワクチンは、生ワクチンですが、その副反応は非常に軽く、ほとんどは注射部位の腫れや痛み、一時的な微熱程度です。稀に、ワクチンによる無菌性髄膜炎などが報告されていますが、その発生頻度は、自然に感染した場合に比べてはるかに低く、安全性は非常に高いとされています。おたふくかぜのワクチンは、現在、定期接種ではないため、任意接種となり、費用は自己負担です。しかし、一度感染してしまった時の身体的・精神的・経済的な損失を考えれば、その費用は決して高いものではありません。お近くの内科やトラベルクリニックなどで相談し、接種を検討してみてはいかがでしょうか。