「起立性調節障害(OD)」は、一般的に思春期に多い病気として知られています。しかし、成人してからも、同様の症状に悩まされ続ける人や、大人になってから初めて発症する人も、実は少なくありません。朝起きられない、午前中の強い倦怠感、立ちくらみやめまい。これらの症状を、単なる「低血圧」や「疲れやすい体質」として片付けているけれど、実はその背景に、治療が必要な自律神経の機能不全が隠れている可能性があるのです。大人の場合に、OD様の症状が起きる原因は様々です。一つは、思春期に発症したODが、完全に治癒しないまま、成人期にまで持ち越されてしまうケースです。症状は軽くなったものの、ストレスや過労、睡眠不足などが引き金となって、再び症状が悪化することがあります。もう一つは、成人してから新たに発症するケースです。特に、女性の場合は、出産後のホルモンバランスの乱れや、育児による極度の疲労、あるいは更年期における自律神経の揺らぎが、OD様の症状を引き起こすことがあります。また、男女問わず、過重労働や長時間にわたるデスクワーク、不規則なシフト勤務といった、現代社会特有の生活習慣も、自律神経のバランスを崩し、症状を誘発する大きな要因となります。大人の場合、問題となるのは、この病気に対する医療現場や社会の認知度が、まだ低いことです。子供であれば「起立性調節障害」と診断されるような症状でも、大人が訴えると、「うつ病」や「慢性疲労症候群」と診断されたり、あるいは「原因不明の不定愁訴」として、はっきりとした診断がつかないまま、ドクターショッピングを繰り返してしまったりすることが少なくありません。もし、あなたが長年、原因不明の朝の不調や、立ちくらみに悩んでいるのであれば、子供の病気だと諦めずに、一度、自律神経の専門家がいる医療機関に相談してみる価値はあります。受診すべき診療科としては、「循環器内科」で心臓や血圧に異常がないかを確認した上で、「心療内科」や、自律神経外来を標榜する「内科」などが挙げられます。あなたの長年の苦しみは、正しい診断と治療によって、改善できる可能性があるのです。