ある日突然、体に熱っぽさを感じ、体温計の数字が三十八度を超えている。そんな時、多くの人が「病院へ行こう」と考えますが、同時に「一体、何科を受診すれば良いのだろう?」という、素朴な、しかし重要な疑問に直面します。特に、大人が自分のために病院を選ぶ場合、その選択肢の多さに戸惑うことも少なくありません。この問いに対する最も基本的で、かつ安全な答えは、まずは「一般内科」あるいは「総合診療科」を受診することです。なぜなら、発熱は、非常に多くの病気の初期症状として現れる、極めて一般的なサインだからです。風邪やインフルエンザといったよくある感染症から、肺炎、腎盂腎炎、あるいは自己免疫疾患まで、その原因は多岐にわたります。一般内科や総合診療科の医師は、特定の臓器に限定せず、患者さんの全身の状態を幅広く診察するプロフェッショナルです。丁寧な問診で、発熱以外の症状(咳、喉の痛み、腹痛、関節痛など)を聞き取り、聴診や触診、そして必要に応じて血液検査やレントゲン検査などを行うことで、発熱の原因となっている病気を総合的に探っていきます。そして、その診察の結果、より専門的な治療が必要だと判断された場合に、適切な専門診療科への「橋渡し」をしてくれるのです。例えば、ひどい咳や呼吸困難があれば「呼吸器内科」へ、排尿時の痛みや背中の痛みがあれば「泌尿器科」へ、といった具合です。いきなり専門科を受診してしまうと、もし見立てが違った場合に、再度別の科を受診し直すという手間がかかってしまいます。最初に総合的な窓口である内科を受診することは、このような「たらい回し」を防ぎ、的確な診断への最短ルートをナビゲートしてもらう上で、非常に賢明な選択と言えるのです。もちろん、喉の痛みだけが突出して強い場合は耳鼻咽喉科、ケガをした後の発熱なら整形外科、というように、明らかな原因が他にある場合はその限りではありません。しかし、特に思い当たる節がなく、どうすれば良いか迷った時は、まず「内科」の扉を叩く。これが、発熱時に覚えておくべき、基本の行動原則です。
発熱したらまず何科?最初に選ぶべき診療科の基本