朝、ぐったりとベッドから起き上がれない我が子を前に、「いつまで寝ているの!」「学校へ行く気がないの?」と、つい厳しい言葉を投げかけてしまう。そんな経験に、胸を痛めている親御さんは少なくないでしょう。しかし、もしその原因が起立性調節障害(OD)であるなら、そのような言葉は、お子さんを深く傷つけ、症状をさらに悪化させてしまうだけです。ODの子供たちへの対応で、家族が心得るべき最も大切なことは、「この病気は、本人の気力や根性の問題ではない」と、心から理解することです。子供自身が、誰よりも「学校へ行きたいのに、体が動かない」という、もどかしさと罪悪感に苦しんでいます。その苦しみに寄り添い、家庭を「安心できる安全基地」にすることが、回復への第一歩となります。では、具体的にどのように接すれば良いのでしょうか。まず、「無理に起こさない」ことです。朝、叩き起こしたり、布団をはがしたりする行為は、症状を悪化させるだけでなく、親子の信頼関係を損ないます。声かけは優しく、一度で起きられなくても責めないでください。次に、「共感の言葉をかける」ことです。「つらいね」「しんどいね」と、本人の苦しみをそのまま受け止め、共感する姿勢を示しましょう。「怠けている」というレッテルを貼らず、一番の理解者でいてあげることが、子供の孤立感を和らげます。そして、「できたことを褒める」習慣をつけましょう。午前中は動けなくても、午後から少し散歩に行けた。宿題を少しだけ進められた。そんな小さな一歩を「すごいね」「頑張ったね」と具体的に褒めてあげることで、子供は自己肯定感を取り戻し、次への意欲に繋がります。生活面では、医師の指導のもと、水分や塩分を多めに摂れるような食事を工夫したり、立ちくらみがしにくいように、ベッドの頭側を少し高くしてあげたり、といったサポートが有効です。また、学校との連携も重要です。親が積極的に学校と連絡を取り、病気について説明し、遅刻や欠席への理解を求めることで、子供の心理的な負担は大きく軽減されます。焦らず、比べず、休むことを認め、子供のペースを信じて待つ。その根気強いサポートこそが、ODの子供にとって、何よりの薬となるのです。
「怠け」じゃない、起立性調節障害の子供への正しい接し方