「脂肪肝」と聞くと、多くの人が「お酒の飲みすぎが原因」と考えがちです。しかし、近年、お酒を全く飲まない、あるいは、飲んだとしても少量であるにもかかわらず、肝臓に脂肪がたまってしまう「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」の患者さんが、急速に増加しており、大きな問題となっています。これは、もはや他人事ではない、現代の食生活と密接に関わる、新しい国民病とも言える病気です。NAFLDの最大の原因は、「肥満」と、それに伴う「インスリン抵抗性」です。食べ過ぎや運動不足によって、消費しきれなかったエネルギーは、中性脂肪として体内に蓄えられます。その主な貯蔵庫が、皮下脂肪や内臓脂肪、そして「肝臓」なのです。特に、糖質の多い食事(ご飯、パン、麺類、甘いお菓子やジュースなど)の摂りすぎは、肝臓での脂肪の合成を促進し、NAFLDの直接的な引き金となります。NAFLDは、その進行度によって、二つのタイプに分けられます。一つは、単に肝臓に脂肪がたまっているだけで、炎症は起きていない「単純性脂肪肝(NAFLD)」です。これは、アルコール性脂肪肝と同様に、比較的予後は良好で、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善によって、改善が見込めます。しかし、問題となるのが、もう一つのタイプである「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」です。これは、脂肪肝をベースに、肝臓に炎症や線維化(組織が硬くなること)が加わった、より進行した病態です。NASHを放置すると、自覚症状がないまま、十数年の歳月をかけて、肝硬変や肝がんへと進行していく可能性があり、「沈黙の病」として、非常に警戒されています。診断は、血液検査で肝機能の異常が見つかったことをきっかけに、腹部超音波検査や、肝臓の硬さを測定するエラストグラフィ検査などを行って進められます。お酒を飲まないから、肝臓は大丈夫。その考えは、もはや過去のものです。肥満や、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を指摘されている方は、飲酒習慣の有無にかかわらず、定期的に肝機能のチェックを受け、NAFLDのリスクを意識することが、健康長寿の鍵となります。
お酒を飲まないのに脂肪肝?非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは