現在、三十代から五十代くらいの、いわゆる「大人世代」の中には、子供の頃に、おたふくかぜのワクチンを接種する機会がなかった、という方が、実はかなりの数に上ります。おたふくかぜワクチンは、長い間、個人の判断で受ける「任意接種」であったため、接種率が低い時代が続きました。そのため、この世代は、ウイルスに対する免疫を持たないまま、大人になっている可能性が高いのです。もし、子供の頃におたふくかぜに自然にかかった確証もない、という場合、あなたは、いつ感染してもおかしくない、無防備な状態にあると言えます。そして、大人がおたふくかぜにかかった場合のリスクは、前述の通り、非常に深刻です。では、私たちワクチン未接種世代は、今からどのような対策を考えるべきなのでしょうか。最も確実で、効果的な対策は、やはり「ワクチンを接種する」ことです。「今さら打っても…」と思うかもしれませんが、何歳になっても、ワクチンによる予防効果は十分に期待できます。特に、これから子供を持つことを考えている男性、あるいは、保育士や教師など、日常的に子供と接する機会の多い職業の方は、自分自身と周りの人々を守るために、接種を強くお勧めします。接種を検討する際には、まず、自分が本当に免疫を持っているかどうかを、「抗体検査」で調べることができます。これは、少量の血液を採るだけで、ムンプスウイルスに対する免疫(抗体)の有無を確認できる検査です。もし、抗体が十分にあれば、ワクチンを接種する必要はありません。抗体が不十分であった場合にのみ、ワクチンを接種する、という合理的な選択が可能です。抗体検査やワクチン接種は、内科やトラベルクリニックなどで受けることができます。費用は自己負担となりますが、一度感染してしまった場合の、仕事への影響や、合併症のリスクを考えれば、決して高い投資ではありません。また、日常生活での予防も大切です。おたふくかぜが流行している時期には、手洗いやうがいを徹底し、人混みを避ける、といった基本的な感染対策も有効です。自分のワクチン歴や感染歴が曖昧である、という方は、ぜひ一度、この機会にご自身の「おたふく対策」について、真剣に考えてみてはいかがでしょうか。それは、未来の健康を守るための、賢明な一歩となるはずです。