中学二年の春、僕の体は突然、朝の時間を拒絶するようになりました。目覚ましが鳴っても、金縛りにあったように体が動かない。無理に起き上がろうとすると、目の前が真っ暗になり、激しい頭痛と吐き気に襲われる。母親は毎朝、「早く起きなさい!」と僕を叱りましたが、僕にはどうすることもできませんでした。午前中は、まるで抜け殻のようにベッドで過ごし、昼過ぎになると、ようやく少し動けるようになる。そんな日が続きました。学校を休みがちになり、成績は下がり、友人たちとの関係も疎遠になっていきました。何よりつらかったのは、「怠けている」「サボっている」という、周りの目と、そう思ってしまう自分自身でした。小児科で「起立性調節障害」という診断を受けた時、僕は正直、ほっとしました。「気のせいじゃなかったんだ。病気だったんだ」と。医師は、僕と両親に、この病気のメカニズムを丁寧に説明してくれました。そして、「君のせいじゃない。体が、成長に追いつこうと必死になっているだけなんだよ」と言ってくれました。その言葉に、僕は救われた気がしました。治療は、まず生活習慣の改善から始まりました。毎日、水を1.5リットル飲むこと。塩分を少し多めに摂ること。そして、どんなに調子が悪くても、午前中に一度は体を起こして、座っている時間を作ること。最初は、それさえもつらかったですが、両親が協力してくれて、少しずつ実践できるようになりました。血圧を上げる薬も飲み始めました。すぐに劇的な効果があったわけではありません。それでも、学校の先生が、僕の病気を理解し、遅刻しても教室に入れてくれるようになったことは、大きな支えでした。保健室登校から始め、少しずつ授業に出る時間を増やしていく。調子の良い日もあれば、悪い日もある。一進一退の繰り返しでした。完全に毎日、朝から登校できるようになったのは、診断を受けてから一年近く経った頃でした。長い道のりでしたが、僕は、この経験を通して、目に見えないつらさを理解すること、そして、自分のペースで進むことの大切さを学びました。あの時、僕を信じ、支えてくれた家族と先生には、感謝しかありません。
私が起立性調節障害と診断され、学校に復帰するまで