女性が発熱した時、その原因は一般的な風邪や感染症だけとは限りません。女性特有の体の仕組みや、婦人科系の病気が、熱の引き金となっている可能性も、常に頭の片隅に置いておく必要があります。特に、発熱に加えて「下腹部痛」や「おりものの異常」といった症状が伴う場合は、「婦人科」の受診を検討すべき重要なサインです。女性の発熱の原因として、まず考えられるのが「骨盤内炎症性疾患(PID)」です。これは、子宮や卵管、卵巣といった、骨盤内の臓器に細菌が感染して炎症を起こす病気の総称です。クラミジアや淋菌といった性感染症が原因となることも多く、発熱や下腹部痛、そして膿のような異常なおりものが見られます。放置すると、不妊や子宮外妊娠の原因となることもあるため、早期に婦人科で抗生物質による適切な治療を受けることが不可欠です。また、腎盂腎炎と症状が似ていますが、「卵巣炎」や「卵管炎」も、高熱と片側の下腹部痛を引き起こします。さらに、月経周期に関連した発熱もあります。排卵の時期に、一時的に体温が上昇することはよく知られていますが、これは通常、微熱程度です。しかし、月経前になると、ホルモンバランスの変動から、風邪でもないのに微熱や倦怠感が出る「月経前症候群(PMS)」の症状に悩まされる人もいます。また、妊娠中に発熱した場合は、自己判断は絶対に禁物です。胎児への影響を考慮し、安全な薬を処方してもらう必要があるため、まずは必ずかかりつけの「産婦人科」に相談してください。では、内科と婦人科、どちらを受診すれば良いか迷った時は、どうすれば良いのでしょうか。その判断のヒントは、やはり「付随する症状」です。咳や喉の痛みといった上気道症状がメインであれば内科へ。下腹部痛やおりものの異常、不正出血といった、明らかに婦人科系の症状が伴う場合は婦人科へ。もし、どちらの症状も同じくらい強く、判断に迷う場合は、まずは内科を受診し、全身的な診察を受けた上で、必要であれば婦人科を紹介してもらう、という流れが安心です。女性の体は複雑です。発熱というサインを、多角的な視点で捉えることが大切です。