それは、ある平日の朝、ベッドから起き上がろうとした瞬間に、突然やってきました。視界が、まるで高速で回転する洗濯機の中に放り込まれたかのように、ぐわんぐわんと激しく揺れ始めたのです。天井も、壁も、床も、全てが歪んで、どちらが上でどちらが下かもわからない。あまりの感覚の異常さに、私はパニックに陥りました。体を動かそうとすると、めまいはさらにひどくなり、同時に、胃の奥から強烈な吐き気がこみ上げてきました。私は、這うようにしてトイレにたどり着き、何度も嘔吐しました。しかし、胃の中が空っぽになっても、吐き気は一向に治まりません。立っていることはもちろん、座っていることさえできず、ただ床にうずくまって、めまいが過ぎ去るのを待つしかありませんでした。幸い、ろれつが回らないとか、手足がしびれるといった症状はなかったため、「脳ではないかもしれない」と、かろうじて冷静さを保つことができましたが、その恐怖と苦しみは、筆舌に尽くしがたいものでした。その日は、結局、仕事を休むしかなく、一日中、目を閉じてベッドで横になっていました。少しでも頭を動かすと、また激しいめまいが襲ってくるため、寝返りさえ打てません。翌日、まだ少しふらつきは残るものの、なんとか歩けるようになった私は、同僚に勧められた「耳鼻咽喉科」を受診しました。医師は、私の話を聞き、特殊なゴーグルのようなものをかけて、眼球の動きを観察しました。そして、「頭を動かしますよ」と言って、私をベッドに寝かせ、頭を特定の方向に傾けました。すると、あの地獄のような回転性めまいが、再び再現されたのです。医師は、穏やかな口調で言いました。「良性発作性頭位めまい症(BPPV)ですね。耳の中の石が、剥がれて迷い込んでいるだけですよ。大丈夫、すぐに治せますから」。そして、その場で、私の頭をゆっくりと特定の手順で動かす「理学療法」を行ってくれました。すると、不思議なことに、あれほどひどかっためまいが、すっと消えていったのです。原因がわかり、その場で症状が改善したことに、私は心から安堵しました。あの時、的確な診療科を選んでいなければ、私はもっと長く、あの恐怖と不安に苛まれていたことでしょう。
私が回転性めまいと吐き気で動けなくなった日