風邪でもないのに、何週間も、あるいは何ヶ月も、微熱がだらだらと続く。あるいは、原因がわからないまま、高い熱が出たり下がったりを繰り返す。このように、一般的な検査を行っても原因が特定できない、三週間以上続く三十八度以上の発熱を、医学的には「不明熱(FUO: Fever of Unknown Origin)」と呼びます。この状態は、患者さんにとって、身体的なつらさはもちろん、「何か重い病気なのではないか」という、精神的な不安が非常に大きいものです。ドクターショッピングを繰り返し、途方に暮れてしまう方も少なくありません。不明熱の原因は、大きく分けて三つのカテゴリーに分類されます。一つ目は、「感染症」です。結核や、心臓の弁に細菌が付着する感染性心内膜炎、あるいは腹腔内膿瘍(お腹の中に膿がたまる病気)など、通常の診察では見つけにくい、特殊な、あるいは体の深い場所にある感染症が原因となります。二つ目は、「悪性腫瘍(がん)」です。特に、悪性リンパ腫や白血病といった血液のがん、あるいは腎臓がんなどが、発熱を主症状として現れることがあります。そして、三つ目が「膠原病(こうげんびょう)・自己免疫疾患」です。関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)、血管炎など、免疫システムが誤って自分自身の体を攻撃してしまう病気が、慢性的な炎症を引き起こし、発熱の原因となります。では、この複雑で難解な不明熱を、どこに相談すれば良いのでしょうか。このような、診断がついていない、複数の領域にまたがる可能性のある症状の診断を専門とするのが、「総合診療科(総合内科)」です。総合診療科医は、まさに「病気の探偵」のような存在です。患者さんの話を詳細に聞き、全身をくまなく診察し、膨大な医学的知識の中から、可能性のある病気をリストアップし、それを一つひとつ、必要な検査を組み立てて潰していく、という診断プロセスを得意としています。そして、原因が特定できた段階で、最も適切な専門家へと繋いでくれます。もし、原因が膠原病である可能性が高いと判断されれば、「リウマチ・膠原病内科」が専門の診療科となります。原因不明の熱に悩んだら、やみくもに病院を渡り歩くのではなく、まずは「総合診療科」の扉を叩いてみてください。そこが、診断への確かな入り口となるはずです。