「肋軟骨炎と診断され、薬を飲んで安静にしているのに、もう何週間も痛みが引かない」。そんな、長引く症状に悩まされている方もいるかもしれません。肋軟骨炎は、通常、数週間から数ヶ月で自然に治癒すると言われていますが、人によっては、痛みが慢性化し、日常生活に支障をきたすことがあります。なぜ、症状が長引いてしまうのでしょうか。その原因は、いくつか考えられます。まず、最も大きな原因が「安静が保てていない」ことです。肋軟骨炎の治療の基本は、炎症が起きている部分に負担をかけないことです。しかし、仕事や家事、育児などで、どうしても胸郭に力が入る動作を続けなければならない場合、治りかけてはまた炎症がぶり返す、という悪循環に陥ってしまいます。特に、慢性的な咳や、くしゃみが多いアレルギー体質の方は、意図せずして常に患部に衝撃を与え続けていることになり、治癒を妨げる大きな要因となります。次に、「姿勢の悪さ」も、治癒を遅らせる原因の一つです。猫背や、長時間同じ姿勢でのデスクワークは、胸郭の柔軟性を低下させ、特定の肋軟骨に持続的なストレスをかけ続けます。炎症が起きている場所に、常に負担がかかるような姿勢を続けていては、なかなか痛みは改善しません。また、精神的な「ストレス」や「不安」も、痛みを長引かせる要因として無視できません。「心臓の病気ではないか」という不安が根底にあると、痛みに対して過敏になり、脳が痛みを強く感じやすくなってしまうことがあるのです。では、どうすれば良いのでしょうか。対策としては、まず、医師と相談の上、痛みを誘発する動作を特定し、それを徹底的に避ける工夫をすることです。必要であれば、バストバンドなどで胸郭を軽く固定するのも有効です。そして、意識的に姿勢を正すこと。ストレッチなどで、胸や背中の筋肉の柔軟性を取り戻すことも大切です。理学療法士の指導のもと、正しいリハビリテーションを行うのも良いでしょう。そして、この病気は必ず治る良性のものだと正しく理解し、過度な不安を抱え込まないこと。痛みが強い場合は、我慢せずにペインクリニックなどで神経ブロック注射を検討するのも一つの手です。焦らず、根気よく、多角的なアペローチで取り組むことが、長引く痛みからの脱出の鍵となります。