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トイレの回数を減らすための生活習慣
トイレの回数が多いという悩みは、必ずしも病気が原因とは限りません。日々の何気ない生活習慣が、頻尿を引き起こしているケースも非常に多く見られます。薬や治療に頼る前に、まずはご自身のライフスタイルを見直し、改善できる点がないか探してみましょう。いくつかの簡単な工夫で、トイレの悩みは大きく改善する可能性があります。まず、基本となるのが「水分の摂り方」です。健康のためにと、一日に二リットル以上の水を飲むことを心がけている方もいるかもしれませんが、一度にがぶ飲みするのは避けましょう。膀胱が急激に満たされ、すぐに尿意を催してしまいます。水分は、コップ一杯程度を、一日のうちにこまめに分けて摂るのが賢明です。また、就寝の二時間から三時間前からは、水分の摂取を控えるようにすると、夜間頻尿の改善に繋がります。次に、見直したいのが「飲み物の種類」です。コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインや、ビールなどのアルコールには、強い利尿作用があります。これらの飲み物を好む方は、飲む量や時間帯を意識するだけでも、トイレの回数は変わってくるはずです。例えば、午後のコーヒーをカフェインレスのものに変えたり、寝る前の晩酌を控えたりするなどの工夫を試してみましょう。そして、意外と見過ごされがちなのが「体の冷え」です。体が冷えると、血管が収縮し、体は余分な水分を尿として排出しようとします。また、膀胱そのものが冷えによって刺激され、過敏になることもあります。腹巻きやカイロでお腹周りを温めたり、温かい飲み物や根菜類など、体を温める食事を心がけたり、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる習慣をつけることも、頻尿対策として非常に有効です。さらに、女性や中高年の男性に特におすすめなのが、「骨盤底筋トレーニング」です。尿道を締める役割を持つ骨盤底筋を鍛えることで、尿意を我慢する力を高めることができます。これらの生活習慣の改善は、すぐに劇的な効果が現れるものではありませんが、根気強く続けることで、あなたのトイレの悩みを根本から解決する手助けとなってくれるはずです。
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私がアルコール性肝障害で入院した、ある夏の日のこと
四十代も半ばを過ぎ、営業職として、毎晩のように取引先との会食で杯を重ねる日々。それが、私の日常でした。「酒は仕事のうち」と自分に言い聞かせ、強いと言われる酒を武器に、業績を上げてきました。健康診断で毎年、「γ-GTPが高いですね。お酒は控えるように」と言われ続けていましたが、「このくらい、どうってことない」と、全く意に介していませんでした。その日、異変は突然やってきました。朝から、経験したことのないような、全身を鉛で固められたかのような強烈な倦怠感。食欲は全くなく、無理に水を飲んでも、すぐに吐いてしまう。そして、体温は三十八度を超えていました。ただの二日酔いや夏風邪ではない、何か得体の知れないものに体を蝕まれているような感覚でした。鏡を見ると、白目のはずの部分が、明らかに黄色がかっている。さすがに「これはおかしい」と感じ、ふらふらの状態で近所の内科クリニックへ駆け込みました。クリニックの医師は、私の顔色と、黄色い目を見るなり、表情を硬くしました。すぐに行われた血液検査の結果は、衝撃的なものでした。AST、ALT、そしてγ-GTP、全ての肝機能の数値が、基準値を何十倍も超える、見たこともないような異常値を示していたのです。医師から告げられた病名は、「重症型アルコール性肝炎」。そして、「すぐに専門病院に入院して、集中的な治療が必要です」と、その場で大学病院への紹介状が書かれました。大学病院での診断も同じでした。即日入院となり、私の腕には点滴の針が刺されました。絶対安静と、もちろん、絶対禁酒。肝臓を保護する薬の投与と、栄養補給の点滴が、来る日も来る日も続きました。医師からは、「もう少し来るのが遅かったら、肝不全で命の危険もありましたよ。あなたの肝臓は、もう限界を超えて悲鳴を上げていたんです」と、厳しい言葉を告げられました。病室のベッドの上で、私は、これまでの自分の生き方を、ただただ後悔しました。お酒に強いことを誇り、体のサインを無視し続けた結果が、これでした。幸い、二週間の入院治療で、私の肝機能は危機的な状況を脱しましたが、完全に元に戻ることはありませんでした。あの日、私の「沈黙の臓器」が発した、最後の悲鳴。それを聞き逃さなかったことが、私の人生の大きな転機となったのです。
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私が回転性めまいと吐き気で動けなくなった日
それは、ある平日の朝、ベッドから起き上がろうとした瞬間に、突然やってきました。視界が、まるで高速で回転する洗濯機の中に放り込まれたかのように、ぐわんぐわんと激しく揺れ始めたのです。天井も、壁も、床も、全てが歪んで、どちらが上でどちらが下かもわからない。あまりの感覚の異常さに、私はパニックに陥りました。体を動かそうとすると、めまいはさらにひどくなり、同時に、胃の奥から強烈な吐き気がこみ上げてきました。私は、這うようにしてトイレにたどり着き、何度も嘔吐しました。しかし、胃の中が空っぽになっても、吐き気は一向に治まりません。立っていることはもちろん、座っていることさえできず、ただ床にうずくまって、めまいが過ぎ去るのを待つしかありませんでした。幸い、ろれつが回らないとか、手足がしびれるといった症状はなかったため、「脳ではないかもしれない」と、かろうじて冷静さを保つことができましたが、その恐怖と苦しみは、筆舌に尽くしがたいものでした。その日は、結局、仕事を休むしかなく、一日中、目を閉じてベッドで横になっていました。少しでも頭を動かすと、また激しいめまいが襲ってくるため、寝返りさえ打てません。翌日、まだ少しふらつきは残るものの、なんとか歩けるようになった私は、同僚に勧められた「耳鼻咽喉科」を受診しました。医師は、私の話を聞き、特殊なゴーグルのようなものをかけて、眼球の動きを観察しました。そして、「頭を動かしますよ」と言って、私をベッドに寝かせ、頭を特定の方向に傾けました。すると、あの地獄のような回転性めまいが、再び再現されたのです。医師は、穏やかな口調で言いました。「良性発作性頭位めまい症(BPPV)ですね。耳の中の石が、剥がれて迷い込んでいるだけですよ。大丈夫、すぐに治せますから」。そして、その場で、私の頭をゆっくりと特定の手順で動かす「理学療法」を行ってくれました。すると、不思議なことに、あれほどひどかっためまいが、すっと消えていったのです。原因がわかり、その場で症状が改善したことに、私は心から安堵しました。あの時、的確な診療科を選んでいなければ、私はもっと長く、あの恐怖と不安に苛まれていたことでしょう。
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私が起立性調節障害と診断され、学校に復帰するまで
中学二年の春、僕の体は突然、朝の時間を拒絶するようになりました。目覚ましが鳴っても、金縛りにあったように体が動かない。無理に起き上がろうとすると、目の前が真っ暗になり、激しい頭痛と吐き気に襲われる。母親は毎朝、「早く起きなさい!」と僕を叱りましたが、僕にはどうすることもできませんでした。午前中は、まるで抜け殻のようにベッドで過ごし、昼過ぎになると、ようやく少し動けるようになる。そんな日が続きました。学校を休みがちになり、成績は下がり、友人たちとの関係も疎遠になっていきました。何よりつらかったのは、「怠けている」「サボっている」という、周りの目と、そう思ってしまう自分自身でした。小児科で「起立性調節障害」という診断を受けた時、僕は正直、ほっとしました。「気のせいじゃなかったんだ。病気だったんだ」と。医師は、僕と両親に、この病気のメカニズムを丁寧に説明してくれました。そして、「君のせいじゃない。体が、成長に追いつこうと必死になっているだけなんだよ」と言ってくれました。その言葉に、僕は救われた気がしました。治療は、まず生活習慣の改善から始まりました。毎日、水を1.5リットル飲むこと。塩分を少し多めに摂ること。そして、どんなに調子が悪くても、午前中に一度は体を起こして、座っている時間を作ること。最初は、それさえもつらかったですが、両親が協力してくれて、少しずつ実践できるようになりました。血圧を上げる薬も飲み始めました。すぐに劇的な効果があったわけではありません。それでも、学校の先生が、僕の病気を理解し、遅刻しても教室に入れてくれるようになったことは、大きな支えでした。保健室登校から始め、少しずつ授業に出る時間を増やしていく。調子の良い日もあれば、悪い日もある。一進一退の繰り返しでした。完全に毎日、朝から登校できるようになったのは、診断を受けてから一年近く経った頃でした。長い道のりでしたが、僕は、この経験を通して、目に見えないつらさを理解すること、そして、自分のペースで進むことの大切さを学びました。あの時、僕を信じ、支えてくれた家族と先生には、感謝しかありません。
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「怠け」じゃない、起立性調節障害の子供への正しい接し方
朝、ぐったりとベッドから起き上がれない我が子を前に、「いつまで寝ているの!」「学校へ行く気がないの?」と、つい厳しい言葉を投げかけてしまう。そんな経験に、胸を痛めている親御さんは少なくないでしょう。しかし、もしその原因が起立性調節障害(OD)であるなら、そのような言葉は、お子さんを深く傷つけ、症状をさらに悪化させてしまうだけです。ODの子供たちへの対応で、家族が心得るべき最も大切なことは、「この病気は、本人の気力や根性の問題ではない」と、心から理解することです。子供自身が、誰よりも「学校へ行きたいのに、体が動かない」という、もどかしさと罪悪感に苦しんでいます。その苦しみに寄り添い、家庭を「安心できる安全基地」にすることが、回復への第一歩となります。では、具体的にどのように接すれば良いのでしょうか。まず、「無理に起こさない」ことです。朝、叩き起こしたり、布団をはがしたりする行為は、症状を悪化させるだけでなく、親子の信頼関係を損ないます。声かけは優しく、一度で起きられなくても責めないでください。次に、「共感の言葉をかける」ことです。「つらいね」「しんどいね」と、本人の苦しみをそのまま受け止め、共感する姿勢を示しましょう。「怠けている」というレッテルを貼らず、一番の理解者でいてあげることが、子供の孤立感を和らげます。そして、「できたことを褒める」習慣をつけましょう。午前中は動けなくても、午後から少し散歩に行けた。宿題を少しだけ進められた。そんな小さな一歩を「すごいね」「頑張ったね」と具体的に褒めてあげることで、子供は自己肯定感を取り戻し、次への意欲に繋がります。生活面では、医師の指導のもと、水分や塩分を多めに摂れるような食事を工夫したり、立ちくらみがしにくいように、ベッドの頭側を少し高くしてあげたり、といったサポートが有効です。また、学校との連携も重要です。親が積極的に学校と連絡を取り、病気について説明し、遅刻や欠席への理解を求めることで、子供の心理的な負担は大きく軽減されます。焦らず、比べず、休むことを認め、子供のペースを信じて待つ。その根気強いサポートこそが、ODの子供にとって、何よりの薬となるのです。
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「おたふくかも?」と思った時の正しい過ごし方
大人がおたふくかぜに感染してしまった場合、つらい症状を乗り切り、合併症のリスクを減らすためには、適切な療養とセルフケアが非常に重要になります。おたふくかぜにはウイルスを直接退治する薬はないため、自分自身の免疫力がウイルスを打ち負かすのを、静かにサポートしてあげることが治療の基本です。まず、何よりも優先すべきは「絶対安静」です。高熱と強い倦怠感は、体がウイルスと全力で戦っているサインです。仕事や家事は完全に休み、とにかく体を横にして、エネルギーの消耗を最小限に抑えましょう。無理に動くと、体力を消耗し、回復が遅れるだけでなく、髄膜炎や精巣炎といった合併症を誘発するリスクを高めてしまいます。次に重要なのが、「水分補給」です。高熱で大量の汗をかくため、脱水症状に陥りやすくなります。水やお茶、経口補水液などを、こまめに摂取することを心がけてください。そして、多くの人を悩ませるのが、耳下腺の痛みによる「食事困難」です。口を開けたり、物を噛んだりすると激痛が走るため、食事を摂るのが非常につらくなります。この時期は、栄養バランスよりも、まず「口にできるものを摂る」ことを最優先に考えましょう。おかゆや、よく煮込んだうどん、ゼリー、プリン、ヨーグルト、アイスクリームといった、あまり噛まずに済む、喉越しの良いものがお勧めです。また、唾液の分泌を促す、レモンや梅干しといった「酸っぱいもの」は、唾液腺を刺激して激痛を引き起こすため、絶対に避けてください。痛みを和らげるための工夫としては、腫れている耳下腺のあたりを、冷たいタオルや冷却シートで「冷やす」と、心地よく感じ、痛みが少し和らぐことがあります。入浴は、体力を消耗するため、熱が下がって体調が落ち着くまでは、控えるのが賢明です。そして、おたふくかぜは、学校保健安全法で「出席停止」が定められている感染症です。耳下腺の腫れが現れてから五日が経過し、かつ全身状態が良好になるまでは、他の人にうつしてしまう可能性があるため、外出は厳禁です。つらい時期ですが、焦らず、じっくりと体を休ませることが、回復への一番の近道となるのです。
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オフィスでの冷えは万病のもと!賢い冷房対策
夏のオフィスは、快適な仕事環境であるはずが、多くの人、特に女性にとっては、寒さとの戦いの場となっていることが少なくありません。「冷房が効きすぎている」と感じながらも、周りの人に遠慮して、我慢してしまってはいないでしょうか。このオフィスの「冷え」こそが、冷房病を引き起こし、夏場の生産性を著しく低下させる大きな原因です。賢い対策で、快適なオフィス環境を自ら作り出しましょう。まず、服装による「自己防衛」が基本です。さっと羽織れるカーディガンやジャケット、ストールは必須アイテム。特に、冷気は下に溜まりやすいため、足元の冷え対策が重要です。ひざ掛けはもちろん、見た目が気になるなら、厚手の靴下やレッグウォーマー、あるいはデスクの下に置く小型のパネルヒーターなども有効です。血行を妨げない、ゆったりとした服装を心がけることも大切です。次に、自分の席の位置を見直してみましょう。エアコンの吹き出し口の真下は、冷気が直接当たる「極寒エリア」です。可能であれば、席を移動させてもらうか、あるいは、エアコンの風向きを調整するための「風よけパネル」などを設置するよう、上司や総務部に相談してみるのも一つの手です。周りの人との「コミュニケーション」も重要です。「寒いと感じているのは自分だけではないか」と思いがちですが、実は、隣の席の人も同じように我慢しているかもしれません。「少し寒いのですが、設定温度を一度上げてもよろしいでしょうか?」と、勇気を出して声をかけてみましょう。オフィス全体の快適性を考える、良いきっかけになるかもしれません。また、長時間同じ姿勢でいると、血行が悪くなり、さらに冷えを感じやすくなります。一時間に一度は立ち上がって、少し歩き回ったり、席でできる簡単なストレッチ(足首を回す、肩を回すなど)を行ったりして、血流を促しましょう。温かいハーブティーや生姜湯などを、マグカップで飲むのも、手軽に体を内側から温める良い方法です。オフィスの冷えは、個人の我慢で解決すべき問題ではありません。少しの工夫と、周りへの働きかけで、誰もが快適に仕事ができる環境を目指しましょう。
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夏の夜の快眠の敵、寝室の冷房との付き合い方
うだるような熱帯夜、快適な睡眠のためには、エアコンの助けが不可欠です。しかし、その使い方を間違えると、寝ている間に体を冷やしすぎ、翌朝、だるさや頭痛といった、冷房病の症状を引き起こす原因となってしまいます。夏の夜の快眠は、寝室の冷房と、いかに上手に付き合うかにかかっています。多くの人がやってしまいがちな失敗が、低い温度設定のまま、一晩中つけっぱなしにしてしまうことです。眠りにつく時は暑く感じても、明け方にかけて外気温が下がってくると、設定温度が低すぎると、体を必要以上に冷やしてしまいます。これが、自律神経の乱れを招き、睡眠の質を低下させるのです。快眠のための、理想的なエアコンの使い方は、「タイマー機能」を賢く活用することです。まず、就寝時の設定温度は、二十六度から二十八度程度が快適とされています。そして、「切タイマー」を、眠りに入ってから二時間から三時間後に設定するのがお勧めです。深い眠りに入る、寝始めの時間帯に、快適な室温を保つことで、スムーズな入眠を促します。タイマーが切れた後は、室温は徐々に上昇しますが、朝方までにはある程度の涼しさが保たれます。もし、タイマーが切れた後に暑くて目が覚めてしまう場合は、「入タイマー」を併用するのも良い方法です。例えば、起床する一時間前くらいに、再びエアコンが作動するように設定しておけば、寝汗をかくことなく、すっきりと目覚めることができます。また、エアコンの「風向き」も重要なポイントです。冷たい風が、直接体に当たり続けると、その部分だけが極端に冷えてしまい、体調不良の原因となります。風向きは、水平か、上向きに設定し、部屋全体に穏やかな空気の流れを作るようにしましょう。扇風機やサーキュレーターを、壁や天井に向けて使い、部屋の空気を循環させるのも、体感温度を下げ、エアコンの設定温度を高めに保つための賢い工夫です。寝具も、吸湿性・速乾性に優れた麻や綿の素材のものを選び、パジャマも長袖・長ズボンで、体の冷えすぎを防ぎましょう。夏の夜の冷房は、敵ではなく、味方です。その特性を理解し、上手にコントロールすることで、質の高い睡眠と、健やかな夏の朝を手に入れることができるのです。