健康知識と医療の基本をわかりやすく解説

医療
  • そのトイレの回数は病気のサインかも

    医療

    トイレの回数が多いという症状は、ありふれているだけに、つい「水分を摂りすぎたかな」「体が冷えたかな」と、日常生活の中の原因探しで完結してしまいがちです。しかし、頻尿は、体の内部で起きている、より深刻な病気が原因で引き起こされている場合があります。特に、内科系の疾患が隠れているサインとして、見逃してはならないケースがあるのです。まず、頻尿とともに注意すべき最も代表的な症状が、「異常な喉の渇き(口渇)」です。もし、トイレの回数が増えただけでなく、同時に、水を飲んでも飲んでも喉が渇いて仕方がない、飲む水の量が明らかに増えた、と感じる場合は、「糖尿病」を強く疑う必要があります。糖尿病になると、血液中の糖分(血糖値)が高くなります。すると、体は余分な糖を尿として排出しようとするため、尿の量が増え、結果としてトイレの回数が多くなります。そして、大量の水分が尿として排出されるため、体は脱水状態になり、強い喉の渇きを覚えるのです。このサインに加えて、体重が急に減少したり、体がだるかったりする場合は、速やかに内科を受診し、血糖値の検査を受けるべきです。また、高血圧の治療を受けている方も注意が必要です。高血圧の薬の中には、「利尿薬」という種類の薬が含まれていることがあります。これは、体内の余分な塩分と水分を尿として排出させることで、血圧を下げる薬です。そのため、副作用としてトイレの回数が増えることがあります。もし、新しい血圧の薬を飲み始めてから頻尿になった場合は、主治医に相談してみましょう。さらに、心臓の機能が低下する「心不全」や、腎臓の機能が悪化する「腎不全」でも、体の水分バランスが崩れ、頻尿、特に夜間頻尿が起こることがあります。これらの場合は、足のむくみや息切れといった、他の症状を伴うことが多くあります。このように、トイレの回数が多いという一つの症状も、他の全身症状と合わせて考えることで、体の内部からの重要な警告信号となり得ます。頻尿以外の体の変化にも、ぜひ目を向けてみてください。

  • 咳が止まらない時の診療科選び、私の結論

    医療

    長引く咳に悩まされ、どの病院へ行けば良いのかと、インターネットで検索を繰り返す日々。内科、呼吸器内科、耳鼻咽喉科…選択肢は多いけれど、一体どこが自分にとっての正解なのか。そんな「何科問題」に、私なりの結論を出した経験をお話ししたいと思います。私の場合は、風邪をひいた後、痰の絡む湿った咳と、常に喉の奥に何かが張り付いているような不快感が、一ヶ月以上も続いていました。最初は、かかりつけの内科で咳止めをもらっていましたが、一向に改善しません。次に私が向かったのは、咳の専門家である呼吸器内科でした。レントゲンや呼吸機能検査を受けましたが、結果は「異常なし」。「感染後咳嗽でしょう」との診断で、気管支拡張薬などを処方されましたが、それでも症状は変わりませんでした。途方に暮れていた時、ふと、あることに気づきました。それは、横になると咳がひどくなること、そして、日中も鼻をすする癖があることです。「もしかして、原因は鼻なのでは?」そう考えた私は、最後の望みをかけて、耳鼻咽喉科を受診しました。ファイバースコープで鼻の奥を診てもらった瞬間、医師は言いました。「ああ、ひどい副鼻腔炎ですね。鼻水が全部、喉に落ちていますよ(後鼻漏)。これが咳の原因です」。原因が判明した瞬間、目の前がパッと開けたような気がしました。その後、鼻の治療を開始すると、あれだけ私を悩ませていた頑固な咳は、嘘のように少しずつ収まっていったのです。この経験から私が学んだのは、診療科選びに「絶対の正解はない」ということ、そして、「自分の症状を最もよく知っているのは自分自身だ」ということです。私の場合は、鼻の症状がヒントとなり、最終的に耳鼻咽喉科にたどり着きました。もし、あなたの咳が夜間や早朝に集中し、ヒューヒューという音がするなら、呼吸器内科が正解かもしれません。大切なのは、自分の咳のタイプや、伴う症状を注意深く観察し、仮説を立ててみること。そして、一つの科で改善しない場合は、別の可能性を考えて、違う科を受診してみる柔軟な視点を持つことです。あなたの咳の悩みからの解放は、あなた自身の観察眼と、行動力にかかっているのかもしれません。

  • インフルエンザの登園・登校は何日休む?

    医療

    子供がインフルエンザと診断されたら、家庭での看病とともに、親が考えなければならないのが、いつから保育園や学校に再び通わせることができるのか、という問題です。インフルエンザは、感染力が非常に強い「第二種の感染症」として、学校保健安全法で出席停止期間が明確に定められています。これは、本人の回復のためだけでなく、集団生活の場での感染拡大を防ぐために、非常に重要なルールです。現在の出席停止期間の基準は、「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあっては三日)を経過するまで」とされています。少し複雑に聞こえますが、二つの条件を両方ともクリアする必要がある、ということです。具体的に見ていきましょう。まず、「発症した後五日」という条件です。ここでの「発症日」は、症状(通常は発熱)が出現した日を「〇日目」として数えます。例えば、月曜日に発熱した場合、月曜が〇日目、火曜が一日目となり、五日を経過するのは、土曜日ということになります。そして、もう一つの条件が「解熱した後二日(幼児は三日)」です。ここでの「解熱」とは、三十七度五分未満の平熱になった状態を指します。例えば、水曜日に熱が下がった場合、木曜日が解熱後一日目、金曜日が二日目となります。この二つの条件を、両方とも満たした時点で、初めて登園・登校が再開できます。先ほどの例で言えば、月曜に発症し、水曜に解熱した場合、「発症後五日」の条件を満たすのは土曜日から、「解熱後二日」の条件を満たすのは金曜日からとなるため、より遅い方、つまり土曜日から登校可能、ということになります。もし、木曜まで熱が続いた場合は、「解熱後二日」は土曜日となり、登校できるのは同じく土曜日からとなります。この基準は、あくまで最低限のものです。登園・登校を再開する際には、医師の診察を受け、周囲への感染力がないことを証明する「治癒証明書」や「登園許可書」の提出を求められることがほとんどです。自己判断で登校させず、必ず医師の許可を得るようにしましょう。

  • そのめまいと吐き気、脳卒中のサインかも?危険な症状の見分け方

    医療

    めまいと吐き気は、多くの場合、命に別状のない耳の病気が原因です。しかし、ごく稀に、その背後に「脳卒中(脳梗塞や脳出血)」という、一刻を争う、命に関わる病気が隠れていることがあります。特に、体のバランスを司る「小脳」や「脳幹」といった部分に脳卒中が起きた場合、耳の病気と非常によく似た、激しいめまいと吐き気を引き起こすのです。「どうせ耳の病気だろう」と自己判断してしまうと、手遅れになりかねません。ここでは、危険な脳卒中のサインを、耳の病気と見分けるための重要なチェックポイントを解説します。以下の症状が、めまいと吐き気に加えて、一つでも当てはまる場合は、絶対に様子を見ずに、すぐに救急車を呼んでください。激しい頭痛:特に、「後頭部をハンマーで殴られたような」と表現される、突然の激しい頭痛は、くも膜下出血などの危険なサインです。ろれつが回らない、言葉が出にくい:うまく喋れない、単語が出てこないといった「言語障害」。片側の手足や顔の麻痺、しびれ:「片方の腕に力が入らない」「箸をうまく持てない」「顔の半分が歪んで、口の片側から水がこぼれる」。物が二重に見える(複視):片方の目で隠しても、物が二重に見える。まっすぐ歩けない、立てない:ふらついて、まっすぐ歩くことができず、片側に倒れそうになる。耳の病気でも歩行は困難になりますが、脳が原因の場合は、その不安定さがより顕著です。意識障害:呼びかけへの反応が鈍い、意識が朦朧としている。これらの神経症状は、脳の機能が障害されていることを示す、極めて重要なサインです。耳が原因のめまいの場合は、どんなにめまいがひどくても、意識ははっきりしており、手足の麻痺やろれつ障害が起こることはありません。これが、両者を見分ける上での、決定的な違いです。また、高齢者や、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の持病がある方は、脳卒中のリスクが元々高いため、より一層の注意が必要です。めまいと吐き気に、「神経症状」が伴うか否か。この一点を、冷静に、しかし迅速に判断することが、あなたの、あるいはあなたの大切な人の命を救うことに繋がるのです。

  • なぜ治らない?肋軟骨炎が長引く原因と対策

    医療

    「肋軟骨炎と診断され、薬を飲んで安静にしているのに、もう何週間も痛みが引かない」。そんな、長引く症状に悩まされている方もいるかもしれません。肋軟骨炎は、通常、数週間から数ヶ月で自然に治癒すると言われていますが、人によっては、痛みが慢性化し、日常生活に支障をきたすことがあります。なぜ、症状が長引いてしまうのでしょうか。その原因は、いくつか考えられます。まず、最も大きな原因が「安静が保てていない」ことです。肋軟骨炎の治療の基本は、炎症が起きている部分に負担をかけないことです。しかし、仕事や家事、育児などで、どうしても胸郭に力が入る動作を続けなければならない場合、治りかけてはまた炎症がぶり返す、という悪循環に陥ってしまいます。特に、慢性的な咳や、くしゃみが多いアレルギー体質の方は、意図せずして常に患部に衝撃を与え続けていることになり、治癒を妨げる大きな要因となります。次に、「姿勢の悪さ」も、治癒を遅らせる原因の一つです。猫背や、長時間同じ姿勢でのデスクワークは、胸郭の柔軟性を低下させ、特定の肋軟骨に持続的なストレスをかけ続けます。炎症が起きている場所に、常に負担がかかるような姿勢を続けていては、なかなか痛みは改善しません。また、精神的な「ストレス」や「不安」も、痛みを長引かせる要因として無視できません。「心臓の病気ではないか」という不安が根底にあると、痛みに対して過敏になり、脳が痛みを強く感じやすくなってしまうことがあるのです。では、どうすれば良いのでしょうか。対策としては、まず、医師と相談の上、痛みを誘発する動作を特定し、それを徹底的に避ける工夫をすることです。必要であれば、バストバンドなどで胸郭を軽く固定するのも有効です。そして、意識的に姿勢を正すこと。ストレッチなどで、胸や背中の筋肉の柔軟性を取り戻すことも大切です。理学療法士の指導のもと、正しいリハビリテーションを行うのも良いでしょう。そして、この病気は必ず治る良性のものだと正しく理解し、過度な不安を抱え込まないこと。痛みが強い場合は、我慢せずにペインクリニックなどで神経ブロック注射を検討するのも一つの手です。焦らず、根気よく、多角的なアペローチで取り組むことが、長引く痛みからの脱出の鍵となります。

  • その頬の腫れ、本当におたふく?似ている病気との違い

    医療

    耳の下から顎にかけて、片側あるいは両側がパンパンに腫れている。この症状を見ると、誰もが「おたふくかぜ」を疑います。しかし、耳下腺が腫れる病気は、おたふくかぜだけではありません。中には、全く異なる治療が必要な病気も隠れているため、自己判断は禁物です。ここでは、おたふくかぜと症状が似ている、他の病気について解説します。まず、最も鑑別が必要なのが、「反復性耳下腺炎」です。これは、おたふくかぜのようにウイルス感染が原因ではなく、アレルギーや、唾液のうっ滞、あるいは口腔内の細菌などが原因で、耳下腺の炎症を何度も繰り返す病気です。特に、子供によく見られます。おたふくかぜとの大きな違いは、「何度も繰り返す」という点です。おたふくかぜは、一度かかれば終生免疫が得られるため、二度かかることは、まずありません。反復性耳下腺炎は、数ヶ月から数年おきに、同じように耳下腺が腫れるのが特徴です。次に、「化膿性耳下腺炎」です。これは、主に口の中の細菌が、唾液腺の管を逆流して耳下腺に感染し、膿がたまってしまう病気です。おたふくかぜの腫れが、比較的弾力があるのに対し、化膿性耳下腺炎の腫れは、より硬く、赤みや熱感を伴い、押すと激しい痛みがあります。抗生物質による治療が必要となります。また、「唾石症(だせきしょう)」も、耳下腺や顎下腺の腫れの原因となります。これは、唾液の成分が固まって石(唾石)ができ、唾液の通り道を塞いでしまう病気です。食事の時など、唾液がたくさん作られるタイミングで、急に腺が腫れて痛むのが特徴です。さらに、シェーグレン症候群のような「自己免疫疾患」や、稀ではありますが「耳下腺腫瘍(良性・悪性)」なども、耳下腺の腫れを引き起こします。これらの病気は、いずれも専門家による診断が不可欠です。血液検査でムンプスウイルスの抗体を調べたり、超音波検査やCT検査で腺の内部の状態を詳しく観察したりすることで、おたふくかぜとの鑑別を行います。頬の腫れに気づいたら、安易に「おたふくかぜだろう」と決めつけず、必ず内科や耳鼻咽喉科を受診し、正確な診断を受けるようにしてください。

  • 肋軟骨炎の痛み、その特徴と原因を探る

    医療

    肋軟骨炎は、その特徴的な痛み方から、心臓の病気と間違えられやすいですが、その原因とメカニズムは全く異なります。この病気について正しく理解することは、不必要な不安を取り除き、適切な対処法を見つけるために役立ちます。肋軟骨炎の痛みの最大の特徴は、前述の通り、「局所性」と「再現性」です。痛みは、胸の真ん中にある胸骨の左右どちらかの、第二から第五肋軟骨あたりに発生することがほとんどです。そして、その痛い部分を指で軽く押すだけで、「ズキッ」とした鋭い痛みが再現されます。この「押すと痛い」という圧痛の存在が、診断における最も重要な手がかりとなります。また、深呼吸、咳、くしゃみ、寝返り、腕を伸ばすといった、胸郭を動かす動作によって、痛みが誘発されたり、悪化したりするのも、肋軟骨炎に典型的な症状です。痛みは、数週間から数ヶ月続くこともありますが、基本的には自然に治癒していく良性の病気であり、後遺症を残すこともありません。では、なぜこのような炎症が起きてしまうのでしょうか。実は、肋軟骨炎の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、いくつかの要因が関わっていると考えられています。最も多いとされるのが、「物理的な負担」です。例えば、激しい咳が長く続いた後や、ゴルフのスイング、あるいは重い荷物を持ち上げるなど、胸部に繰り返し負担がかかるような動作が、肋軟骨に微細な損傷や炎症を引き起こすきっかけとなると考えられています。また、猫背などの「不良姿勢」も、胸郭の動きを不自然にし、特定の肋軟骨に持続的なストレスをかける原因となり得ます。その他、稀ではありますが、ウイルス感染や、胸部の打撲などの外傷が引き金となることもあります。特に、若い女性に多く見られる傾向があることも知られていますが、その理由ははっきりしていません。原因が特定できないことも多いですが、いずれにせよ、胸部に過度な負担をかけないように、安静を保つことが、回復への基本的なアプローチとなります。

  • 肝臓をいたわる食事とは?アルコール性肝障害の栄養療法

    医療

    アルコール性肝障害の治療の根幹は「禁酒」ですが、それと同じくらい重要になるのが、傷ついた肝臓を回復させ、再生を促すための「栄養療法」です。長年の飲酒習慣によって、体は栄養バランスが大きく崩れ、特に肝臓の働きに不可欠な栄養素が枯渇している状態にあります。適切な食事を摂ることは、回復を早め、合併症を防ぐ上で、薬にも勝る効果を発揮します。まず、最も意識すべきなのは、「十分なエネルギーとタンパク質の確保」です。アルコール性肝障害の患者さんは、アルコール自体からカロリーを摂取している一方で、食事からの栄養摂取が疎かになり、実は「栄養失調」に陥っていることが少なくありません。肝臓が再生するためには、その材料となる良質なタンパク質が不可欠です。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを、毎食バランス良く取り入れることを心がけましょう。ただし、肝硬変まで進行し、肝性脳症のリスクがある場合は、タンパク質の摂取制限が必要になることもあるため、必ず医師や管理栄養士の指示に従ってください。次に、アルコールの分解や、肝臓の代謝機能に大量に消費されてしまう「ビタミンとミネラル」を、積極的に補給することも重要です。特に、ビタミンB群(豚肉、レバー、うなぎ、玄米など)、亜鉛(牡蠣、牛肉、チーズなど)、そして抗酸化作用のあるビタミンC(果物、野菜)やビタミンE(ナッツ類、植物油)は、意識して摂りたい栄養素です。これらの栄養素をバランス良く摂取するためには、特定の食品に偏るのではなく、多様な食材を使った、彩り豊かな食事を目指すのが良いでしょう。また、「塩分の制限」も、特に肝硬変で腹水やむくみがある場合には、非常に重要となります。塩分の摂りすぎは、体内に水分を溜め込み、症状を悪化させる原因となります。出汁の旨味や、香辛料、香味野菜(生姜、ニンニク、ハーブなど)を上手に活用し、薄味でも美味しく食べられる工夫をしましょう。加工食品やインスタント食品は、塩分が多く含まれているため、できるだけ避けるのが賢明です。傷ついた肝臓をいたわる食事は、決して特別なものではありません。一日三食、主食・主菜・副菜の揃った、バランスの良い食事を規則正しく摂ること。この当たり前の食生活を取り戻すことが、あなたの肝臓を再生させる、何よりの力となるのです。

  • 原因不明の熱が続く…「不明熱」で頼りになる診療科とは

    医療

    風邪でもないのに、何週間も、あるいは何ヶ月も、微熱がだらだらと続く。あるいは、原因がわからないまま、高い熱が出たり下がったりを繰り返す。このように、一般的な検査を行っても原因が特定できない、三週間以上続く三十八度以上の発熱を、医学的には「不明熱(FUO: Fever of Unknown Origin)」と呼びます。この状態は、患者さんにとって、身体的なつらさはもちろん、「何か重い病気なのではないか」という、精神的な不安が非常に大きいものです。ドクターショッピングを繰り返し、途方に暮れてしまう方も少なくありません。不明熱の原因は、大きく分けて三つのカテゴリーに分類されます。一つ目は、「感染症」です。結核や、心臓の弁に細菌が付着する感染性心内膜炎、あるいは腹腔内膿瘍(お腹の中に膿がたまる病気)など、通常の診察では見つけにくい、特殊な、あるいは体の深い場所にある感染症が原因となります。二つ目は、「悪性腫瘍(がん)」です。特に、悪性リンパ腫や白血病といった血液のがん、あるいは腎臓がんなどが、発熱を主症状として現れることがあります。そして、三つ目が「膠原病(こうげんびょう)・自己免疫疾患」です。関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)、血管炎など、免疫システムが誤って自分自身の体を攻撃してしまう病気が、慢性的な炎症を引き起こし、発熱の原因となります。では、この複雑で難解な不明熱を、どこに相談すれば良いのでしょうか。このような、診断がついていない、複数の領域にまたがる可能性のある症状の診断を専門とするのが、「総合診療科(総合内科)」です。総合診療科医は、まさに「病気の探偵」のような存在です。患者さんの話を詳細に聞き、全身をくまなく診察し、膨大な医学的知識の中から、可能性のある病気をリストアップし、それを一つひとつ、必要な検査を組み立てて潰していく、という診断プロセスを得意としています。そして、原因が特定できた段階で、最も適切な専門家へと繋いでくれます。もし、原因が膠原病である可能性が高いと判断されれば、「リウマチ・膠原病内科」が専門の診療科となります。原因不明の熱に悩んだら、やみくもに病院を渡り歩くのではなく、まずは「総合診療科」の扉を叩いてみてください。そこが、診断への確かな入り口となるはずです。

  • 治療の第一歩は「禁酒」、アルコール性肝障害との向き合い方

    医療

    アルコール性肝障害と診断された時、その治療法は、実は非常にシンプルかつ、最も困難なものから始まります。それは、原因となっているアルコールを断つこと、すなわち「禁酒」です。どんなに優れた薬や治療法も、飲酒を続けながらでは全く効果がありません。禁酒こそが、この病気に対する唯一絶対の、そして最も効果的な治療法なのです。病気の進行度によって、禁酒による回復の度合いは異なります。肝臓に脂肪がたまっているだけの「アルコール性脂肪肝」の段階であれば、完全な禁酒、あるいは厳しい節酒を数ヶ月間続けることで、肝機能の数値は改善し、肝臓は健康な状態に回復することが期待できます。しかし、炎症を伴う「アルコール性肝炎」や、線維化が進んだ「アルコール性肝線維症」の段階になると、禁酒をしても、完全な回復は難しくなります。それでも、禁酒をすることで、それ以上の病状の悪化を防ぎ、肝硬変や肝がんへと進行するリスクを大幅に減らすことができます。そして、残念ながら「肝硬変」まで進行してしまうと、硬くなった肝臓の組織が元に戻ることはありません。この段階での禁酒の目的は、残された肝機能をできるだけ長く維持し、腹水や黄疸、食道静脈瘤の破裂といった、命に関わる合併症を防ぐことにあります。禁酒と並行して、栄養バランスの取れた食事を摂る「栄養療法」も非常に重要です。特に、タンパク質やビタミン、ミネラルが不足しがちになるため、医師や管理栄養士の指導のもと、適切な食事管理を行います。しかし、頭では「禁酒しなければ」とわかっていても、長年の飲酒習慣を自分の意志だけで断ち切るのは、想像以上に困難です。特に、アルコール依存症を合併している場合は、禁酒によって、手の震えや発汗、幻覚といった、つらい離脱症状が現れることもあります。このような場合は、意志の力だけで解決しようとせず、アルコール依存症の専門医療機関(精神科や心療内科)に相談することが不可欠です。専門家によるカウンセリングや、自助グループ(断酒会など)への参加、あるいは離脱症状を和らげるための薬物療法など、様々なサポートを受けることができます。アルコール性肝障害の治療は、孤独な戦いではありません。医療機関や専門家と連携し、正しいサポートを受けながら、一歩ずつ回復への道を歩んでいくことが大切なのです。