健康知識と医療の基本をわかりやすく解説

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  • なぜ女性に多い?冷房病と筋肉量・ホルモンの関係

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    オフィスや電車の中で、男性は「ちょうど良い」と感じている冷房設定でも、女性は「寒すぎる」と、ひざ掛けやカーディガンが手放せない。このような光景は、夏の日常茶飯事です。実際に、冷房病の症状を訴えるのは、男性よりも女性の方が圧倒的に多いと言われています。なぜ、女性は冷房の冷えに、これほど弱いのでしょうか。その背景には、男女の身体的な構造の違いと、女性特有のホルモンバランスが、深く関わっています。まず、最も大きな理由が「筋肉量の違い」です。筋肉は、体の中で最も多くの熱を産生する、いわば「自家発電所」のような組織です。一般的に、女性は男性に比べて筋肉量が少なく、脂肪の割合が多い体つきをしています。そのため、自分で熱を作り出す能力が低く、一度体が冷えてしまうと、なかなか温まりにくいのです。また、皮下脂肪は、一度冷えると、断熱材のように働いて、温まりにくいという性質も持っています。次に、「女性ホルモンの影響」も無視できません。女性の体は、月経周期によって、エストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンのバランスが、常に変動しています。このホルモンバランスは、自律神経の働きと密接にリンクしているため、ホルモンの波が、自律神経のバランスを揺さぶりやすいのです。特に、生理前や更年期など、ホルモンバランスが大きく乱れる時期は、自律神経の機能も不安定になり、体温調節がうまくいかなくなって、冷房病の症状が出やすくなります。さらに、「ファッション」も一因です。夏場、女性は、スカートやサンダル、ノースリーブといった、肌の露出が多い服装をすることが多く、男性に比べて、冷気が直接肌に当たりやすいという側面もあります。体を締め付けるような下着や衣服も、血行を妨げ、冷えを助長する原因となります。このように、熱産生能力の低さ、ホルモンバランスの揺らぎ、そして服装といった、複数の要因が重なることで、女性は男性よりも、はるかに冷房病のリスクに晒されやすいのです。夏の冷え対策は、女性にとって、快適に過ごすためだけでなく、健康を維持するための、重要なテーマと言えるでしょう。

  • 冷房病で病院へ、何科を受診すれば良いのか

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    頭痛、めまい、倦怠感、肩こり…。冷房病の症状は多岐にわたり、一つひとつの症状だけを見ると、どの診療科へ行けば良いのか、判断に迷ってしまうことがよくあります。また、「病気ではないから」と、病院へ行くこと自体をためらってしまう方も少なくありません。しかし、つらい症状が続く場合は、その背後に別の病気が隠れている可能性も否定できません。適切な診療科を選び、専門家に相談することが大切です。まず、様々な症状が複合的に現れており、どの症状が主役なのか自分でもよくわからない、という場合は、「総合診療科」や「一般内科」を最初に受診するのが良いでしょう。医師は、全身の状態を総合的に診察し、症状の裏に、貧血や甲状腺機能の低下、あるいは心臓の病気といった、器質的な疾患が隠れていないかを、血液検査などでスクリーニングしてくれます。ここで、「特に身体的な異常はない」と診断され、症状が自律神経の乱れによるものと判断された場合、そこから、より専門的な診療科へと繋がっていくことになります。もし、めまいや耳鳴りが特に強い場合は、「耳鼻咽喉科」へ。動悸や息切れが気になる場合は、「循環器内科」へ。頭痛がひどい場合は、「神経内科」へ。そして、月経不順や生理痛の悪化など、婦人科系の症状が顕著な場合は、「婦人科」が相談先となります。これらの専門科で、それぞれの臓器に異常がないことを確認した上で、それでもなお、原因不明の不調や、気分の落ち込み、不安感が続く場合。その時に、最終的な受け皿となるのが「心療内科」です。心療内科は、ストレスなどが原因で体に症状が現れる「心身症」の専門家であり、冷房病(自律神経失調症)の治療を最も得意とする診療科の一つです。カウンセリングや、自律神経調整薬、漢方薬などを用いて、心と体の両面からアプローチしてくれます。つらい症状を一人で抱え込まず、まずは内科を窓口として、専門家への相談を始めること。それが、改善への第一歩です。

  • 大人がかかるおたふくかぜ、子供の病気と侮るな

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    「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」と聞けば、多くの人が、両方の頬をパンパンに腫らした子供の姿を思い浮かべるでしょう。確かに、その名の通り、子供の頃にかかる代表的な感染症の一つです。しかし、この病気の原因であるムンプスウイルスに、抗体を持たない大人が感染した場合、その症状は子供のそれとは比べ物にならないほど重く、そして深刻な合併症を引き起こす危険性をはらんでいます。子供の頃にかかった記憶がない、あるいは予防接種を受けたかどうかわからない。そんな大人は、決して「子供の病気だから」と侮ってはいけません。大人がおたふくかぜに感染した場合、まず特徴的なのが「高熱」です。子供の場合は微熱で済むことも多いですが、大人は三十九度から四十度近い高熱が、数日間続くことが少なくありません。この高熱に伴い、インフルエンザに似た、激しい頭痛や関節痛、そして全身を襲う強烈な倦怠感に苦しめられます。そして、おたふくかぜの代名詞とも言える「耳下腺の腫れと痛み」も、大人の方がはるかに強く現れる傾向があります。耳の下から顎にかけて、片側あるいは両側が大きく腫れ上がり、顔の形が変わってしまうほどです。この腫れは、単に見た目の問題だけではありません。口を開けたり、物を噛んだり、あるいは酸っぱいものを想像しただけで、耳の下に激痛が走ります。食事を摂ることさえ困難になり、体力を著しく消耗させてしまうのです。しかし、大人がおたふくかぜにかかった時の本当の恐怖は、その先に待ち受ける「合併症」のリスクの高さにあります。ウイルスが全身に広がることで、髄膜炎や脳炎、そして男性の場合は精巣炎、女性の場合は卵巣炎といった、深刻な病気を引き起こす可能性が、子供に比べて格段に高くなるのです。大人のおたふくかぜは、単なる子供の風邪の延長線上にある病気ではありません。時に、人生を左右するほどの後遺症を残しかねない、警戒すべき感染症であるということを、強く認識しておく必要があります。

  • 女性の発熱、内科か婦人科か?月経周期や下腹部痛がヒント

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    女性が発熱した時、その原因は一般的な風邪や感染症だけとは限りません。女性特有の体の仕組みや、婦人科系の病気が、熱の引き金となっている可能性も、常に頭の片隅に置いておく必要があります。特に、発熱に加えて「下腹部痛」や「おりものの異常」といった症状が伴う場合は、「婦人科」の受診を検討すべき重要なサインです。女性の発熱の原因として、まず考えられるのが「骨盤内炎症性疾患(PID)」です。これは、子宮や卵管、卵巣といった、骨盤内の臓器に細菌が感染して炎症を起こす病気の総称です。クラミジアや淋菌といった性感染症が原因となることも多く、発熱や下腹部痛、そして膿のような異常なおりものが見られます。放置すると、不妊や子宮外妊娠の原因となることもあるため、早期に婦人科で抗生物質による適切な治療を受けることが不可欠です。また、腎盂腎炎と症状が似ていますが、「卵巣炎」や「卵管炎」も、高熱と片側の下腹部痛を引き起こします。さらに、月経周期に関連した発熱もあります。排卵の時期に、一時的に体温が上昇することはよく知られていますが、これは通常、微熱程度です。しかし、月経前になると、ホルモンバランスの変動から、風邪でもないのに微熱や倦怠感が出る「月経前症候群(PMS)」の症状に悩まされる人もいます。また、妊娠中に発熱した場合は、自己判断は絶対に禁物です。胎児への影響を考慮し、安全な薬を処方してもらう必要があるため、まずは必ずかかりつけの「産婦人科」に相談してください。では、内科と婦人科、どちらを受診すれば良いか迷った時は、どうすれば良いのでしょうか。その判断のヒントは、やはり「付随する症状」です。咳や喉の痛みといった上気道症状がメインであれば内科へ。下腹部痛やおりものの異常、不正出血といった、明らかに婦人科系の症状が伴う場合は婦人科へ。もし、どちらの症状も同じくらい強く、判断に迷う場合は、まずは内科を受診し、全身的な診察を受けた上で、必要であれば婦人科を紹介してもらう、という流れが安心です。女性の体は複雑です。発熱というサインを、多角的な視点で捉えることが大切です。

  • 下肢静脈瘤の最新治療、切らないレーザー治療とは

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    かつて、下肢静脈瘤の根本的な治療と言えば、足の付け根などを切開し、逆流の原因となっている静脈を引き抜く「ストリッピング手術」が主流でした。これは、確実な治療法である一方、体への負担が大きく、数日間の入院が必要で、術後の痛みや皮下出血も強いというデメリットがありました。しかし、近年、下肢静脈瘤の治療は劇的に進化しています。その中心となっているのが、皮膚を切らずに、体への負担を最小限に抑えて行う「血管内治療」です。その代表格が、「血管内レーザー焼灼術(しょうしゃくじゅつ)」です。これは、どのような治療法なのでしょうか。血管内レーザー焼灼術は、まず、超音波(エコー)で逆流している静脈の位置を確認しながら、膝のあたりに注射針ほどの細い針を刺します。そして、その針穴から、レーザーファイバーという、髪の毛ほどの細さの光ファイバーを、静脈の中に挿入していきます。ファイバーの先端を、逆流の起点である足の付け根まで進めた後、局所麻酔(TLA麻酔)を静脈の周囲に十分に注入します。この麻酔は、痛みを抑えるだけでなく、周囲の組織を熱から守る重要な役割も果たします。準備が整ったら、レーザーを照射しながら、ファイバーをゆっくりと引き抜いてきます。すると、レーザーの熱エネルギーによって、静脈の壁が内側から焼き固められ、完全に閉塞します。血流がなくなった静脈は、その後、数ヶ月かけて、徐々に体に吸収されていきます。逆流の元栓が閉められることで、ボコボコと浮き出ていた静脈瘤も、自然としぼんで目立たなくなります。この治療の最大のメリットは、皮膚を切開しないため、傷跡がほとんど残らず、術後の痛みも非常に少ないことです。局所麻酔で行えるため、治療時間は三十分から一時間程度で、術後すぐに歩いて帰宅できる「日帰り治療」が可能です。同様の原理で、レーザーの代わりに高周波(ラジオ波)を用いる「血管内高周波焼灼術」もあり、どちらも保険適用で受けることができます。この「切らない治療」の登場により、下肢静脈瘤の治療は、誰もが気軽に、そして安心して受けられるものへと大きく変わったのです。

  • それは冷房病かも?夏に潜む原因不明の不調の正体

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    夏になると、決まって体がだるい。食欲がなく、頭痛や肩こりがひどくなる。室内は涼しいはずなのに、手足は氷のように冷えている。多くの人が「夏バテ」の一言で片付けてしまう、これらの原因不明の不調。その正体は、もしかしたら「冷房病(クーラー病)」かもしれません。冷房病とは、正式な病名ではなく、冷房が効いた環境と、屋外の猛暑との間の「急激な温度差」に、私たちの体が適応できなくなることで引き起こされる、自律神経の不調を指す俗称です。人間の体は、体温を一定に保つために、自律神経が絶えず働いています。暑い時には、血管を広げて熱を逃がし、汗をかいて体温を下げようとします。逆に、寒い時には、血管を収縮させて熱が逃げるのを防ぎ、体を震わせて熱を産生します。この精巧な体温調節システムは、通常、五度程度の温度差であれば、スムーズに対応することができます。しかし、現代の夏は、屋外が三十五度を超える猛暑である一方、オフィスや電車、商業施設の中は二十五度前後と、その温度差は十度以上にも及びます。この過酷な環境に、私たちの体は日に何度も晒されることになるのです。暑い屋外から、急に冷たい室内へ。そしてまた、暑い屋外へ。この急激な温度変化に対応するため、自律神経は、血管の収縮と拡張を、まるでパニックのように、めまぐるしく繰り返さなければなりません。この過剰な働きによって、自律神経は徐々に疲弊し、やがて正常に機能しなくなってしまいます。その結果、体温調節がうまくいかなくなり、血行不良や、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、頭痛、倦怠感、冷え、肩こり、食欲不振、不眠、さらには気分の落ち込みといった、心と体にわたる、ありとあらゆる不調が現れるのです。冷房病は、単なる夏の疲れではありません。それは、現代社会が作り出した、過酷な環境に対する、私たちの体の悲鳴なのです。

  • ぐるぐる回るめまいに吐き気、その原因は「耳」にある

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    天井が、床が、視界に入るもの全てが、まるで高速のメリーゴーラウンドに乗っているかのように、ぐるぐると回り続ける。あまりの気持ち悪さに、胃がひっくり返るような吐き気がこみ上げ、トイレに駆け込む。この、経験した者にしかわからない、地獄のような症状の組み合わせ。その原因の多くは、私たちの「耳」の、さらに奥深くにある「内耳」という小さな器官のトラブルにあります。ここでは、激しい回転性めまいと吐き気を引き起こす、代表的な三つの耳の病気について解説します。1.良性発作性頭位めまい症(BPPV)めまいの原因として最も頻度が高い病気です。内耳にある「耳石(じせき)」という、炭酸カルシウムの小さな粒が、何らかの拍子に本来の位置から剥がれ落ち、体の回転を感知する三半規管の中に入り込んでしまうことで起こります。寝返りをうった時、ベッドから起き上がった時、あるいは上を向いた時など、特定の頭の位置の変化によって、剥がれた耳石が三半規管の中を転がり、リンパの流れを乱すことで、数秒から数十秒間の、非常に激しい回転性めまいと吐き気を引き起こします。めまいは短時間で治まりますが、頭を動かすたびに再発するのが特徴です。2.メニエール病内耳が、リンパ液の過剰な産生によって「水ぶくれ」の状態になってしまう病気です。その特徴は、激しい回転性めまいと吐気に加えて、「難聴」や「耳鳴り」、「耳の閉塞感(詰まった感じ)」といった、聴覚に関する症状を伴うことです。めまいの発作は、数十分から数時間と、比較的長く続く傾向があり、この発作を何度も繰り返します。ストレスや過労が引き金になることが多いと言われています。3.前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)風邪などのウイルス感染をきっかけに、内耳と脳を結ぶ「前庭神経」に炎症が起きる病気です。ある日突然、前触れもなく、非常に激しい回転性めまいと吐き気が始まり、それが数日間、寝ても覚めても持続します。あまりの激しさに、救急車で運ばれることも少なくありません。難聴や耳鳴りといった聴覚症状は伴わないのが、メニエール病との大きな違いです。これらの病気は、いずれも「耳鼻咽喉科」が専門です。治療法もそれぞれ異なり、BPPVであれば耳石を元の位置に戻す理学療法(エプリー法など)、メニエール病や前庭神経炎であれば、薬物療法が中心となります。正確な診断が、適切な治療への第一歩です。

  • これは静脈瘤のサイン?足が出すSOSを見逃さない

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    足の血管がボコボコと浮き出てくる、という見た目の変化は、下肢静脈瘤の最もわかりやすいサインです。しかし、血管が浮き出る前に、あるいは、それと同時に、足は様々なSOSサインを発しています。これらの自覚症状に早く気づき、対処することが、病気の進行を防ぎ、つらい症状から解放されるための鍵となります。以下に挙げる症状に、もし心当たりがあるなら、それは下肢静脈瘤の始まり、あるいは進行のサインかもしれません。足の重さ、だるさ(倦怠感):特に、夕方になると、足が鉛のように重く、だるくなる。一日中立ち仕事をしていたり、デスクワークで座りっぱなしだったりした後に、症状が顕著に現れます。足のむくみ(浮腫):夕方になると靴がきつくなる、靴下の跡がくっきりと残る。指で足のすねを押すと、跡がしばらく戻らない。これも、血液や水分が足に溜まってしまうことで起こります。足の痛み:ズキズキ、ジンジンとした、鈍い痛みを感じる。足のつり(こむら返り):夜、寝ている間に、突然ふくらはぎの筋肉が痙攣し、激しい痛みに襲われる。週に何度も起こる場合は、要注意です。足のかゆみ、皮膚の乾燥:静脈瘤の周辺の皮膚が、カサカサして痒くなることがあります。これは、血行不良によって皮膚に十分な栄養が行き届かなくなるためです。足のほてり、熱感:足が火照るように熱く感じられる。これらの症状の大きな特徴は、「夕方になると悪化し、朝になると軽快する」という、一日の中での変動があることです。また、足を心臓より高くして休ませたり、歩いたりしてふくらはぎの筋肉を動かすと、症状が和らぐ傾向があります。なぜなら、これらの動作は、足に溜まった血液を心臓へと戻すのを助けるからです。もし、これらのサインが複数当てはまり、日常生活で不快感を感じているのであれば、それは単なる「疲れ」ではありません。静脈の弁が壊れ始めている、という体からの明確なメッセージです。血管が目立っていなくても、これらの症状があれば、一度、血管外科などの専門医に相談してみることをお勧めします。超音波検査を受ければ、目には見えない静脈の逆流を、簡単に見つけ出すことができるのです。

  • 整形外科か内科か?胸の痛みで迷った時の正しい判断

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    胸に痛みを感じた時、多くの人が「整形外科に行くべきか、それとも内科に行くべきか」という、重大な選択に直面します。この二つの診療科は、扱う病気の領域が全く異なるため、自分の症状の特徴を正しく見極めて、適切な科を選ぶことが、迅速な診断と安心に繋がります。まず、「整形外科」を受診すべきなのは、痛みに以下のような特徴がある場合です。痛みの場所がはっきりしている:「胸のこの一点が痛い」と、指で正確に場所を指し示すことができる。特定の動作で痛みが誘発・悪化する:体をひねる、深呼吸をする、腕を上げる、寝返りをうつ、といった特定の動きで痛みが強まる。圧痛がある:痛い部分を指で押すと、痛みが再現されたり、さらに強くなったりする。これらの特徴は、痛みの原因が、骨や軟骨、筋肉、神経といった「体の表面に近い運動器」にあることを示唆しており、肋軟骨炎や肋間神経痛、あるいは肋骨の疲労骨折などが考えられます。これらは、まさに整形外科の専門領域です。一方、「内科」、特に「循環器内科」や「呼吸器内科」の受診を最優先で考えるべきなのは、痛みに以下のような特徴がある場合です。痛みの場所が曖昧で、広範囲に感じる:「胸の真ん中あたりが、全体的に重苦しい」といった、漠然とした痛み。締め付けられる、圧迫されるような痛み:まるで重石を乗せられたかのような、鈍い圧迫感。痛み以外の症状を伴う:冷や汗、吐き気、息苦しさ、動悸、発熱、ひどい咳や痰などを伴う。これらのサインは、心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気、あるいは肺炎や胸膜炎、気胸といった肺の病気など、命に関わる可能性のある「内臓の病気」を示唆しています。この場合は、一刻も早く内科的な診察と検査(心電図、レントゲン、血液検査など)を受ける必要があります。結論として、判断のポイントは「痛みと体の動きが連動しているか」です。動きと連動する表面的な痛みなら整形外科へ。内側から来るような、動きと関係ない痛みで、全身症状を伴うなら内科へ。もし、どちらか判断に迷う場合は、まずは内科を受診して、危険な内臓の病気がないことを確認してもらうのが、最も安全なアプローチと言えるでしょう。

  • お酒を飲まないのに脂肪肝?非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは

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    「脂肪肝」と聞くと、多くの人が「お酒の飲みすぎが原因」と考えがちです。しかし、近年、お酒を全く飲まない、あるいは、飲んだとしても少量であるにもかかわらず、肝臓に脂肪がたまってしまう「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」の患者さんが、急速に増加しており、大きな問題となっています。これは、もはや他人事ではない、現代の食生活と密接に関わる、新しい国民病とも言える病気です。NAFLDの最大の原因は、「肥満」と、それに伴う「インスリン抵抗性」です。食べ過ぎや運動不足によって、消費しきれなかったエネルギーは、中性脂肪として体内に蓄えられます。その主な貯蔵庫が、皮下脂肪や内臓脂肪、そして「肝臓」なのです。特に、糖質の多い食事(ご飯、パン、麺類、甘いお菓子やジュースなど)の摂りすぎは、肝臓での脂肪の合成を促進し、NAFLDの直接的な引き金となります。NAFLDは、その進行度によって、二つのタイプに分けられます。一つは、単に肝臓に脂肪がたまっているだけで、炎症は起きていない「単純性脂肪肝(NAFLD)」です。これは、アルコール性脂肪肝と同様に、比較的予後は良好で、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善によって、改善が見込めます。しかし、問題となるのが、もう一つのタイプである「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」です。これは、脂肪肝をベースに、肝臓に炎症や線維化(組織が硬くなること)が加わった、より進行した病態です。NASHを放置すると、自覚症状がないまま、十数年の歳月をかけて、肝硬変や肝がんへと進行していく可能性があり、「沈黙の病」として、非常に警戒されています。診断は、血液検査で肝機能の異常が見つかったことをきっかけに、腹部超音波検査や、肝臓の硬さを測定するエラストグラフィ検査などを行って進められます。お酒を飲まないから、肝臓は大丈夫。その考えは、もはや過去のものです。肥満や、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を指摘されている方は、飲酒習慣の有無にかかわらず、定期的に肝機能のチェックを受け、NAFLDのリスクを意識することが、健康長寿の鍵となります。