健康知識と医療の基本をわかりやすく解説

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  • 子供の発熱は何科?小児科受診の目安と夜間の対応

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    小さなお子さんが、急に体を熱くして、ぐったりしている。親として、これほど心配なことはありません。子供の体調不良で病院を受診する場合、まず第一選択となる診療科は、言うまでもなく「小児科」です。小児科医は、単に体の小さい大人を診るのではなく、日々成長・発達していく子供の体に特有の病気や、年齢ごとの特徴を熟知した、子供の健康の専門家です。では、どのような状態になったら、小児科を受診すれば良いのでしょうか。その目安は、熱の高さそのものよりも、「機嫌」や「全身状態」で判断することが大切です。熱が高くても、水分が摂れていて、比較的元気に遊んでいるようであれば、慌てて夜間救急に駆け込む必要はないかもしれません。逆に、熱はそれほど高くなくても、「ぐったりして元気がない」「顔色が悪い」「水分を全く受け付けない」「呼吸が苦しそう」「何度も嘔吐する」といった場合は、時間外であっても受診を検討すべきです。特に、生後三ヶ月未満の赤ちゃんの三十八度以上の発熱は、重篤な感染症の可能性があるため、原則として、すぐに医療機関を受診する必要があります。いざという時に慌てないために、夜間や休日に受診できる病院や、相談窓口を事前に調べておくことも重要です。多くの自治体では、「小児救急電話相談(#8000)」というサービスがあり、経験豊富な看護師や医師から、受診の必要性や家庭での対処法について、専門的なアドバイスを受けることができます。また、家庭でのケアも、子供の回復を助ける上で欠かせません。脱水症状を防ぐために、子供用のイオン飲料や麦茶、スープなどで、こまめに水分補給を心がけましょう。衣類は、熱がこもらないように薄着にし、汗をかいたらこまめに着替えさせてあげます。体を冷やす場合は、首の付け根や脇の下、足の付け根といった、太い血管が通っている場所を、嫌がらない程度に冷たいタオルなどで冷やすと効果的です。子供の発熱は、親を不安にさせますが、冷静な観察と、適切なタイミングでの受診、そして家庭での優しいケアが、お子さんを快適な回復へと導く鍵となるのです。

  • その発熱、様子見は危険!すぐに救急外来へ行くべきサイン

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    「熱が出たくらいで、病院に行くのは大げさかな」「一晩寝れば治るだろう」。多くの人が、発熱に対してこのように考えがちです。確かに、ほとんどの発熱は、数日で自然に回復する風邪などが原因です。しかし、中には、その背後に一刻を争う、命に関わる病気が隠れていることもあります。様子を見ているうちに、手遅れになってしまうことだけは、絶対に避けなければなりません。ここでは、単なる発熱とは一線を画す、「すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診すべき」危険なサインについて解説します。以下の症状が、発熱と同時に一つでも見られた場合は、絶対に我慢したり、朝まで待ったりしないでください。意識がおかしい:呼びかけへの反応が鈍い、話のつじつまが合わない、意味不明なことを言う、ぐったりして意識が朦朧としている。けいれん(痙攣)を起こした:白目をむいて、手足を突っ張ったり、ガクガクと震わせたりする。経験したことのないような激しい頭痛:まるでハンマーで殴られたかのような、突然の激しい頭痛。呼吸が異常に苦しい:肩で息をしている、横になれないほど息が苦しい、顔色や唇の色が悪い(紫色)。激しい胸の痛み:胸が締め付けられるような、圧迫されるような強い痛みで、冷や汗を伴う。激しい腹痛:体を動かせないほどの、経験したことのないようなお腹の痛み。何度も嘔吐を繰り返し、水分が全く摂れないこれらのサインは、それぞれ、髄膜炎や脳炎、くも膜下出血、重篤な肺炎や心不全、心筋梗塞、あるいは腹膜炎といった、緊急性の高い病気の可能性を示唆しています。特に、高齢者や、糖尿病、心臓病といった持病のある方、あるいは免疫を抑える薬を飲んでいる方は、感染症が重症化しやすいため、より一層の注意が必要です。また、子供の場合は、上記に加えて「ぐったりして元気がない」「顔色が悪い」「水分を受け付けない」といった状態も、危険なサインと捉えるべきです。発熱は、体からの重要なメッセージです。そのメッセージに、「緊急事態」を知らせるアラームが加わっているかどうかを、冷静に見極めること。それが、あなたや、あなたの大切な人の命を守ることに直結するのです。

  • 肋軟骨炎の治療法、安静から注射、手術まで

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    整形外科で「肋軟骨炎」と診断された後、そのつらい痛みから解放されるためには、どのような治療が行われるのでしょうか。肋軟骨炎は、基本的には自然に治癒する良性の病気であるため、治療の主眼は、炎症を鎮め、痛みをコントロールし、体が自然に回復するのを助けることに置かれます。治療法は、症状の重さや持続期間に応じて、段階的に選択されます。まず、治療の基本であり、最も重要なのが「安静」です。痛みの原因となっている胸郭への物理的な負担を減らすことが、回復への第一歩です。医師からは、痛みを誘発するような動作、例えば、重い物を持つ、ゴルフなどのスポーツ、激しい筋力トレーニングなどを、痛みが治まるまで控えるように指導されます。咳が原因の場合は、咳を鎮める治療が優先されます。次に、痛みを和らげるための「薬物療法」が行われます。一般的には、ロキソプロフェンやジクロフェナクといった、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の飲み薬や、湿布、塗り薬が処方されます。これにより、炎症を抑え、痛みを緩和します。ただし、胃腸への副作用があるため、医師の指示通りに服用することが大切です。これらの保存的治療を行っても、痛みがなかなか改善しない、あるいは日常生活に大きな支障をきたすほど痛みが強い場合には、より強力な治療法として「局所注射」が検討されます。これは、痛みの原因となっている肋軟骨の周囲に、直接、局所麻酔薬や、少量のステロイド薬を注射する方法です。ステロイドの強力な抗炎症作用により、痛みが劇的に改善することが期待できます。外来で簡単に行える処置ですが、複数回の注射は推奨されません。そして、これらの治療を全て行っても、数ヶ月以上にわたって頑固な痛みが続き、生活の質が著しく損なわれている、ごく稀な難治性のケースでは、最終的な選択肢として「手術」が考慮されることもあります。これは、炎症を起こしている異常な肋軟骨を部分的に切除するというもので、専門的な施設でのみ行われます。ほとんどの肋軟骨炎は、安静と薬物療法で軽快します。焦らず、医師の指導のもと、適切な治療を続けることが大切です。

  • 胸の鋭い痛み「肋軟骨炎」、最初に受診すべきは何科か

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    深呼吸をした時、咳やくしゃみをした時、あるいは寝返りをうった時、胸の特定の場所に「ズキッ」「ピキッ」という、まるで針で刺されたかのような鋭い痛みが走る。そのあまりの痛みに、「心臓の病気ではないか」と、深刻な不安に駆られる方も少なくないでしょう。しかし、その痛みの原因は、多くの場合「肋軟骨炎(ろくなんこつえん)」という、骨や軟骨の炎症であることが少なくありません。では、この肋軟骨炎を疑った時、私たちは一体、何科の病院へ行けば良いのでしょうか。この問いに対する最も的確な答えは、肋軟骨炎は骨や軟骨といった「運動器」の病気であるため、その専門家である「整形外科」を受診することです。肋軟骨炎は、胸の前面にある胸骨と、あばら骨である肋骨とを繋いでいる「肋軟骨」というクッションの役割を果たす軟骨部分に、何らかの原因で炎症が起きてしまう病気です。整形外科医は、まず丁寧な問診で、いつから、どこが、どのように痛むのかを詳しく聞き取ります。そして、肋軟骨炎の診断において非常に重要となるのが「圧痛(あっつう)」の確認です。医師が患者さんの胸を触診し、痛みを訴えている場所を指で押した時に、本人が「そこです!」と訴えるような、ピンポイントの強い痛みが再現されれば、肋軟骨炎の可能性が非常に高まります。さらに、心臓や肺といった、他の重要な臓器の病気でないことを確認するために、胸部レントゲン検査や心電図検査が行われることもあります。これらの検査で異常が見つからず、特徴的な圧痛が確認されれば、肋軟骨炎と診断されます。治療としては、炎症を抑えるための湿布や塗り薬、内服の消炎鎮痛剤が処方され、安静を保つよう指導されるのが一般的です。痛みが強い場合には、局所麻酔薬やステロイドの注射が行われることもあります。このように、整形外科は、肋軟骨炎の診断から治療までを一貫して行うことができる、まさに専門の診療科なのです。胸の鋭い痛みに気づいたら、まずは運動器の専門家である整形外科の扉を叩いてください。

  • なぜ女性や立ち仕事の人に多い?下肢静脈瘤の原因

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    下肢静脈瘤は、成人の十人に一人、出産経験のある女性では二人に一人が経験するとも言われる、非常にありふれた病気です。そして、その発症には、特定の職業や性別、ライフスタイルが深く関わっています。なぜ、一部の人に特に多く発症するのでしょうか。その原因を理解することで、予防への道筋も見えてきます。下肢静脈瘤の直接的な原因は、足の静脈の中にある「逆流防止弁」が壊れてしまうことです。心臓から送り出された血液は、動脈を通って足の先まで届き、今度は静脈を通って、重力に逆らいながら心臓へと戻っていきます。この時、血液が重力で逆流しないように、静脈の中には、たくさんの「弁」が一方通行の扉のように設置されています。この大切な弁に、長期間にわたって強い圧力がかかり続けると、弁が伸びてしまったり、壊れてしまったりして、完全に閉じなくなります。すると、血液が心臓に戻りきれずに、足の静脈内に逆流して溜まり、血管が風船のように膨らんで、こぶ(静脈瘤)を形成するのです。では、この弁を壊してしまう「圧力」の原因は何でしょうか。最大の要因の一つが、「長時間の立ち仕事」です。美容師、調理師、販売員、教師、看護師など、一日中立ちっぱなしの仕事に従事している人は、常に重力の影響で足の静脈に高い圧力がかかっています。ふくらはぎの筋肉を動かす機会も少ないため、血液を心臓に送り返す「筋ポンプ作用」も働きにくく、血液がうっ滞しやすいのです。また、「女性」に多い理由も明確です。まず、女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)には、血管を拡張させ、弁を緩みやすくする作用があります。そして、最大の要因が「妊娠・出産」です。妊娠すると、大きくなった子宮が、骨盤内の太い静脈を圧迫し、足からの血液の戻りを妨げます。また、ホルモンの影響で血液量も増加するため、静脈への負担はピークに達します。この妊娠中の負担が、弁に大きなダメージを与えてしまうのです。この他、「遺伝的要因(親が静脈瘤である)」「加齢」「肥満」「便秘(排便時のいきみ)」なども、静脈への圧力を高めるリスク因子となります。これらの要因が、複雑に絡み合って、下肢静脈瘤は発症するのです。