ある日、体のどこかに、ニキビとは違う、少し硬いしこりのようなものができていることに気づく。最初は小さかったのに、数ヶ月、数年かけて徐々に大きくなってきた。これが「粉瘤(ふんりゅう)」、またの名を「アテローム」と呼ばれる、非常にありふれた皮膚のできものです。粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に本来は剥がれ落ちるはずの垢(あか)や皮脂といった老廃物が溜まってできた、良性の皮下腫瘍です。体のどこにでもできる可能性がありますが、特に顔や首、背中、耳の後ろなどに好発します。この粉瘤らしきものを見つけた時、多くの人が「一体、何科を受診すればいいのだろう?」と迷ってしまいます。粉瘤の診断と治療を専門的に行う診療科は、主に「皮膚科」と「形成外科」です。まず「皮膚科」は、皮膚疾患全般のエキスパートです。しこりが本当に粉瘤なのか、あるいは脂肪腫や他の皮膚腫瘍ではないのかを正確に診断する能力に長けています。小さな粉瘤であれば、外来での切除手術に対応しているクリニックも多くあります。まずは診断を確定させたい、という場合には、皮膚科を受診するのが最も一般的な選択肢と言えるでしょう。一方、「形成外科」は、体の表面の傷や変形などを、機能的にも美容的にも、よりきれいに治すことを専門とする科です。粉瘤の手術においても、傷跡がなるべく目立たないように切開の方向を工夫したり、丁寧に縫合したりといった、整容的な側面に特に配慮した治療が期待できます。顔や首など、傷跡が気になる場所にできた粉瘤や、サイズが大きくて複雑な手術が必要になりそうな場合は、形成外科に相談するのがおすすめです。また、炎症を起こして赤く腫れあがり、強い痛みを伴う「炎症性粉瘤」の状態になってしまった場合は、まず抗生物質の処方や、溜まった膿を出すための切開排膿処置が必要になります。これも、皮膚科、形成外科のどちらでも対応可能です。どちらの科を受診しても適切な治療は受けられますが、より傷跡をきれいに治したいという希望があるなら形成外科、まずは診断を、という場合は皮膚科、と覚えておくと良いでしょう。
粉瘤(ふんりゅう)は何科へ?正しい診療科と病院選び