肋軟骨炎は、その特徴的な痛み方から、心臓の病気と間違えられやすいですが、その原因とメカニズムは全く異なります。この病気について正しく理解することは、不必要な不安を取り除き、適切な対処法を見つけるために役立ちます。肋軟骨炎の痛みの最大の特徴は、前述の通り、「局所性」と「再現性」です。痛みは、胸の真ん中にある胸骨の左右どちらかの、第二から第五肋軟骨あたりに発生することがほとんどです。そして、その痛い部分を指で軽く押すだけで、「ズキッ」とした鋭い痛みが再現されます。この「押すと痛い」という圧痛の存在が、診断における最も重要な手がかりとなります。また、深呼吸、咳、くしゃみ、寝返り、腕を伸ばすといった、胸郭を動かす動作によって、痛みが誘発されたり、悪化したりするのも、肋軟骨炎に典型的な症状です。痛みは、数週間から数ヶ月続くこともありますが、基本的には自然に治癒していく良性の病気であり、後遺症を残すこともありません。では、なぜこのような炎症が起きてしまうのでしょうか。実は、肋軟骨炎の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、いくつかの要因が関わっていると考えられています。最も多いとされるのが、「物理的な負担」です。例えば、激しい咳が長く続いた後や、ゴルフのスイング、あるいは重い荷物を持ち上げるなど、胸部に繰り返し負担がかかるような動作が、肋軟骨に微細な損傷や炎症を引き起こすきっかけとなると考えられています。また、猫背などの「不良姿勢」も、胸郭の動きを不自然にし、特定の肋軟骨に持続的なストレスをかける原因となり得ます。その他、稀ではありますが、ウイルス感染や、胸部の打撲などの外傷が引き金となることもあります。特に、若い女性に多く見られる傾向があることも知られていますが、その理由ははっきりしていません。原因が特定できないことも多いですが、いずれにせよ、胸部に過度な負担をかけないように、安静を保つことが、回復への基本的なアプローチとなります。
肋軟骨炎の痛み、その特徴と原因を探る