耳の下から顎にかけて、片側あるいは両側がパンパンに腫れている。この症状を見ると、誰もが「おたふくかぜ」を疑います。しかし、耳下腺が腫れる病気は、おたふくかぜだけではありません。中には、全く異なる治療が必要な病気も隠れているため、自己判断は禁物です。ここでは、おたふくかぜと症状が似ている、他の病気について解説します。まず、最も鑑別が必要なのが、「反復性耳下腺炎」です。これは、おたふくかぜのようにウイルス感染が原因ではなく、アレルギーや、唾液のうっ滞、あるいは口腔内の細菌などが原因で、耳下腺の炎症を何度も繰り返す病気です。特に、子供によく見られます。おたふくかぜとの大きな違いは、「何度も繰り返す」という点です。おたふくかぜは、一度かかれば終生免疫が得られるため、二度かかることは、まずありません。反復性耳下腺炎は、数ヶ月から数年おきに、同じように耳下腺が腫れるのが特徴です。次に、「化膿性耳下腺炎」です。これは、主に口の中の細菌が、唾液腺の管を逆流して耳下腺に感染し、膿がたまってしまう病気です。おたふくかぜの腫れが、比較的弾力があるのに対し、化膿性耳下腺炎の腫れは、より硬く、赤みや熱感を伴い、押すと激しい痛みがあります。抗生物質による治療が必要となります。また、「唾石症(だせきしょう)」も、耳下腺や顎下腺の腫れの原因となります。これは、唾液の成分が固まって石(唾石)ができ、唾液の通り道を塞いでしまう病気です。食事の時など、唾液がたくさん作られるタイミングで、急に腺が腫れて痛むのが特徴です。さらに、シェーグレン症候群のような「自己免疫疾患」や、稀ではありますが「耳下腺腫瘍(良性・悪性)」なども、耳下腺の腫れを引き起こします。これらの病気は、いずれも専門家による診断が不可欠です。血液検査でムンプスウイルスの抗体を調べたり、超音波検査やCT検査で腺の内部の状態を詳しく観察したりすることで、おたふくかぜとの鑑別を行います。頬の腫れに気づいたら、安易に「おたふくかぜだろう」と決めつけず、必ず内科や耳鼻咽喉科を受診し、正確な診断を受けるようにしてください。
その頬の腫れ、本当におたふく?似ている病気との違い