それは、特に変わったこともない穏やかな日曜日の朝のことでした。いつも通りトイレに入り、スムーズに排便を済ませて立ち上がろうとした瞬間、目に飛び込んできた光景に私は文字通り凍りつきました。便器の中の水が、想像を絶するほどの鮮やかな赤色に染まっていたのです。慌ててトイレットペーパーで拭いてみると、そこにも真っ赤な血がべっとりと付着していました。しかし、不思議なことに、おしりには全く痛みがありません。切れ痔のようにピリッとした感覚もなければ、腫れているような違和感もありません。あまりの衝撃に、私はしばらくトイレの中で動けなくなってしまいました。「どこか見えないところが大怪我をしているのではないか」「もしかして、手遅れのがんではないか」という恐ろしい考えが次々と頭をよぎり、手足が震えるのを感じました。インターネットで「おしりから血」「鮮血」「痛くない」と必死に検索すると、内痔核という言葉と共に、大腸がんの可能性を指摘する記事がいくつも見つかりました。何科に行けばいいのか調べたところ、肛門科や消化器科が良いとのことだったので、私は翌朝一番で近所の消化器内科クリニックへ駆け込みました。クリニックの待合室では、恥ずかしさと恐怖が入り混じり、逃げ出したいような気持ちでした。しかし、名前を呼ばれて診察室に入り、医師に事の顛末を話すと、先生は非常に落ち着いたトーンで「痛みがない出血こそ、しっかり原因を突き止める必要がありますね」と仰いました。その日のうちに指診と直腸鏡検査を受け、さらに数日後には人生で初めての大腸内視鏡検査、いわゆる大腸カメラを受けることになりました。検査前日は下剤を飲むのが大変でしたが、検査自体は鎮静剤のおかげでうとうとしている間に終わり、痛みも全くありませんでした。結果として、私の出血の原因は、出口のすぐ近くにあった大きめの内痔核と、さらに奥の方に見つかった小さなポリープ一つであることが分かりました。ポリープはその場で切除してもらい、痔については薬と食生活の改善で様子を見ることになりました。先生から「がんではなく、ポリープのうちに取れたのは本当に幸運でしたよ」と言われた瞬間、肩の荷がふわりと降り、目から涙が溢れそうになりました。あの時、もし私が「痛くないから大丈夫だ」と自分を誤魔化して放置していたら、あの小さなポリープは数年後には取り返しのつかないがんになっていたかもしれません。おしりからの出血は、確かに恥ずかしいし怖いものです。でも、自分の体の内側で起きていることは、自分では見ることができません。痛みがないからこそ、専門家の目で見てもらうことがどれほど大切かを、私は身をもって学びました。今、同じようにトイレで血を見て不安になっている方がいたら、どうか怖がらずに病院へ行ってほしいと思います。診察が終わった後のあの開放感と安心感は、何物にも代えがたいものです。自分の命を守れるのは自分だけなのだということを、あの鮮やかな赤色は教えてくれたのだと、今では感謝すらしています。
排便時の痛くない鮮血に驚き病院を受診した私のリアルな体験記