帯状疱疹という病気は、多くの人が一生に一度は経験するかもしれない身近な感染症ですが、その本当の恐ろしさは皮膚の湿疹が治まった後にやってくることがあります。これが「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる状態で、ウイルスによって神経が修復不可能なダメージを受けてしまうことで引き起こされます。この段階になると、もはや何科に行けば良いのかという問いに対しては、「皮膚科とペインクリニック、あるいは脳神経内科の連携」という答えが必要になります。当初、水ぶくれや痛みが出た際に受診するのは皮膚科です。ここで抗ウイルス薬による適切な治療を早期に開始することが、将来の神経痛を防ぐ最大の防御策となります。しかし、適切な治療を受けても、高齢の方や免疫力が低下している方、あるいは初期の痛みが非常に激しかった方などは、湿疹が消えた後も、火傷のようなヒリヒリした痛みや、服が触れるだけで飛び上がるような不快な痛みが数ヶ月、時には数年にわたって残ることがあります。この時、皮膚科の医師は皮膚の状態が正常であることを確認しますが、神経の奥底で燻り続ける痛みに対しては、より専門的な「痛みの管理」が必要になります。ここで登場するのがペインクリニックです。ペインクリニックの専門医は、皮膚科医からバトンを受け取り、神経障害性疼痛に特化した内服薬や、痛みの伝達を抑えるレーザー治療、あるいは神経ブロックなどを駆使して、こじれてしまった神経の興奮を鎮めていきます。帯状疱疹後神経痛は、単なる皮膚病の後遺症ではなく、神経系が過敏に変質してしまった「痛みの病」です。そのため、複数の診療科が協力して治療に当たることが、完治への近道となります。患者さんの中には「皮膚はもうきれいになったのだから、痛むのは気のせいだろうか」と自分を責める方もいますが、それは大きな間違いです。神経が傷ついていることは医学的に証明されており、専門的な治療の対象なのです。もし、あなたが帯状疱疹を経験し、その後の痛みに苦しんでいるのであれば、まずはかかりつけの皮膚科医にその旨を相談し、必要であればペインクリニックへの紹介状を書いてもらいましょう。二つの診療科の知恵を合わせることで、眠れないほどの夜や、外出をためらうほどの苦痛を、一歩ずつ改善していくことが可能になります。痛みを一人で抱え込まず、専門医のネットワークを頼ることで、心身の平穏を取り戻していただきたいと願っています。