りんご病は医学的には伝染性紅斑と呼ばれ、ヒトパルボウイルスB19というウイルスに感染することで発症する疾患です。主に幼児や小学生の間で流行することが多いですが、大人が感染することもあり、その症状は年代によって多岐にわたります。最も特徴的な症状は、病名の由来にもなっている両頬の鮮やかな赤みです。まるでおしろいの上から紅を差したような、あるいは頬を平手打ちされたような独特の赤みが現れます。しかし、多くの患者やその保護者を最も悩ませるのは、頬の赤みに続いて手足や胴体に広がる網目状の発疹と、それに伴う強いかゆみです。このかゆみは、りんご病の経過の中で後半に現れることが多く、特に温まったり日光に当たったりすることで増強する性質を持っています。りんご病のかゆみが発生するメカニズムは、ウイルスが直接皮膚を刺激しているわけではなく、体内の免疫反応の結果として生じるものです。ウイルスに対する抗体が作られ、それが皮膚の微小血管に作用することで発疹やかゆみが引き起こされます。そのため、発疹が出現した時点ですでにウイルスの排出量は激減しており、周囲への感染力はほとんど失われているのがこの病気の不思議な点です。かゆみの程度は個人差が大きく、全く感じない子もいれば、夜も眠れないほど激しく掻きむしってしまう子もいます。大人の場合は特に重症化しやすく、かゆみに加えて関節痛や全身の倦怠感が強く出る傾向があります。このかゆみに対して、家庭でまず行うべきことは徹底した冷却です。かゆい部分を冷たいタオルや保冷剤で優しく冷やすことで、血管が収縮し、神経の興奮が抑えられて一時的に楽になります。逆に、お風呂で長湯をしたり、こたつで温まったりすることは禁物です。血流が良くなるとかゆみの物質であるヒスタミンなどの放出が促進され、症状が急激に悪化してしまいます。また、日光に含まれる紫外線も発疹を再燃させ、かゆみを長引かせる要因となるため、外出時は長袖を着用したり日陰を選んだりする配慮が必要です。医療機関を受診した際には、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の飲み薬、あるいは炎症を鎮めるための外用薬が処方されることがあります。りんご病そのものに特効薬はありませんが、これらによる対症療法で苦痛を和らげることが可能です。発疹は一度消えかけたと思っても、運動や入浴、寒暖差などの刺激によって再び鮮明に浮かび上がってくることがあり、完全に消失するまでには一週間から二週間、長い場合には一ヶ月近くかかることもあります。この期間、肌を清潔に保ちつつ、摩擦を避けることが大切です。特に爪を短く切っておくことは、掻き壊しによる二次感染を防ぐために不可欠な準備です。りんご病は一般的に予後良好な疾患ですが、妊婦が感染すると胎児に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、家族がかかった場合は周囲への配慮も忘れてはいけません。かゆみという不快な症状と正しく向き合い、外部刺激を最小限に抑える生活を心がけることが、回復への最短ルートとなるでしょう。