私はこれまで、病院の領収書なんてその場限りのものだと思い込んでいました。財布の中がかさばるのが嫌で、診察が終わって会計を済ませたら、すぐにシュレッダーにかけるかゴミ箱に捨てていたのです。一回の診察代なんてせいぜい数千円だし、年間で十万円も行くはずがないと高を括っていました。しかし、昨年の出来事が私の考えを根本から変えました。夏の終わりに不運にも重い病気が見つかり、一週間の入院と手術を余儀なくされたのです。退院後の通院も続き、ふと気づいた時には、その年だけでかなりの金額を医療費に費やしていました。年が明け、確定申告の時期になって初めて、私は医療費控除という制度の存在を真剣に意識しました。慌てて家中を探しましたが、手元に残っていたのは入院時の大きな領収書一枚だけでした。月々の通院代や、薬局で支払った多額の薬剤費、さらには通院のために利用したタクシーの控えなど、すべてを捨ててしまっていたのです。病院に電話をして再発行をお願いしましたが、どの病院からも「領収書の再発行は制度上できません」と断られてしまいました。代わりに発行できると言われた支払い証明書は、一通につき千円以上の手数料がかかると聞き、愕然としました。結局、私は証明書の発行手数料を支払ってまで控除を受けるメリットが薄いと判断し、本来なら戻ってきたはずの数万円の還付を諦めるしかありませんでした。あの時、ただ一枚の紙を封筒に入れておくだけで、これほどのお金が手元に残ったのかと思うと、自分の無頓着さが情けなくてなりませんでした。この失敗から学んだことは、健康な時こそ領収書の重みを忘れてはいけないということです。今は、玄関に「病院セット」という箱を置き、帰宅して鍵を置くついでに領収書を投げ込むようにしています。一見するとゴミのように見える小さな紙切れが、実は家計を守るための大切な資産であることを、身をもって痛感しました。皆さんも、自分は大丈夫だと思わずに、今日から受け取る領収書を一枚たりとも無駄にしないでください。あの苦い経験は、私にとって最も高くついた「保管の授業」となりました。