おしりから血が出た、それも鮮やかな赤色で痛みがないとなれば、誰でもパニックになってしまうものです。日々の診療の中で、真っ青な顔をして来院される患者さんを数多く見てきた看護師の立場から、まずは皆様に「落ち着いて、正しく行動するための心得」をお伝えしたいと思います。まず、トイレで鮮血を確認した際に最初にしてほしいのは、出血の仕方をよく観察することです。便の表面に血が筋のように付いているのか、便そのものに混ざっているのか、あるいは便が出た後にポタポタと垂れたり、ペーパーにだけ付くのか、といった情報は、医師が診断を下す際の極めて重要な手がかりになります。特に痛みがない場合、多くの方は「痛くないから大したことはない」と過小評価するか、逆に「痛みがないのに血が出るのは癌の末期に違いない」と過大評価するかのどちらかに極端に振れがちですが、そのどちらも正解ではありません。痛みがない鮮血の多くは内痔核、つまりおしりの中の血管の膨らみが原因ですが、それを確認するためには専門的な診察が不可欠です。次に、何科を受診すべきか迷われると思いますが、基本的には「肛門外科」あるいは「消化器内科」を標榜しているクリニックを選んでください。最近のクリニックは、女性専用の待合室があったり、プライバシーに配慮した個室での問診を行ったりと、患者様が恥ずかしい思いをしないための工夫が凝らされています。「おしりを見せるのが恥ずかしい」という理由で受診を数年も先延ばしにする方もいらっしゃいますが、私たちスタッフにとっては、それは喉を診たり腕の血圧を測ったりするのと何ら変わらない、日常的な医療行為です。むしろ、私たちは「勇気を出して来てくださってありがとう」という気持ちでお迎えしています。受診の際には、出血が始まった時期や回数、便秘や下痢の有無などをメモしていくと、診察がスムーズに進みます。また、血液が付着したペーパーや便の写真をスマートフォンで撮って持参される患者様も増えており、これは視覚的な情報として非常に役立ちます。検査についても、昔に比べれば格段に楽になっています。肛門鏡などは指一本分ほどの太さですし、大腸カメラも麻酔を併用すれば寝ている間に終わります。痛みがない出血は、体があなたに送った「一度チェックを受けて」という招待状のようなものです。それを無視して病気を育ててしまうのではなく、早めにプロの手に委ねてしまいましょう。もし、あなたが今この記事を読みながら不安で震えているなら、まずは深呼吸をして、明日の朝一番で近所の専門クリニックに予約の電話を入れることから始めてください。その一歩が、不安を解消し、健やかな生活を取り戻すための最短ルートになります。私たちはいつでも、あなたの勇気をサポートする準備ができています。