小児科の診察室で毎日多くの子どもたちを診ていると、りんご病の患者さんが「頬が赤くなった」という理由で受診されるのは初期の段階で、数日後に再診される理由の多くは「かゆくて眠れない、どうにかしてほしい」という切実な悩みです。私たち医師がまず強調したいのは、りんご病の発疹とかゆみが現れたときには、すでに周囲への感染力はほぼゼロになっているということです。そのため、出席停止の基準も特になく、本人が元気であれば登校や登園は可能ですが、問題はその後のかゆみのコントロールです。このかゆみは、ウイルスの破片とそれに対する抗体が反応して血管に炎症を起こしている状態ですので、これを鎮めるためには「刺激を避ける」という一点に尽きます。よくある失敗は、かゆがっているからと市販の強力なメントール配合のクリームなどを塗ってしまうことです。りんご病の肌は非常に過敏になっており、強い刺激はかえって炎症を悪化させ、かゆみを増幅させる危険があります。基本的には保湿剤で肌を保護し、かゆみが強い部分には医師が処方した抗ヒスタミン薬や低刺激の塗り薬を使用するのが安全です。また、親御さんには「温めない、こすらない、焼かない」の三原則を徹底するようアドバイスしています。特に、発疹が消えかかった頃に体育の授業で激しく運動したり、運動会などの行事で長時間日光を浴びたりすると、驚くほど鮮やかに対称性の紅斑が戻ってきます。これを繰り返すと、皮膚の過敏状態が長引き、慢性的なかゆみに繋がることもあるため、見た目の発疹が引いても数日間は慎重に様子を見る必要があります。大人の感染についても注意が必要です。お母さんやお父さんにうつった場合、指の関節が腫れて痛んだり、全身にむくみが出たりすることがあります。これは子どもにはあまり見られない症状で、自己判断で鎮痛剤を乱用すると胃腸を痛めることもありますので、必ず医療機関を受診してください。また、特に重要なのが、周囲に妊婦さんがいないかを確認することです。りんご病のウイルスは胎児の赤血球を作る細胞を壊してしまう性質があり、胎児水腫という深刻な状態を招く恐れがあります。本人はかゆくて大変な時期ですが、家族として社会的責任を果たすためにも、妊婦さんとの接触は厳に慎むべきです。かゆみを抑える飲み薬は、眠気を伴うものもありますので、学校生活や習い事への影響も考慮して処方を選びます。お子さんが夜中に掻きむしっている姿を見るのは辛いものですが、必ず出口のある病気です。適切な外用薬と環境調整で、この時期を乗り切るサポートをしていきましょう。不安なことがあれば、いつでも私たち小児科医に相談してください。
小児科医が語るりんご病のかゆみを悪化させないための注意