子どもの病気だと思っていたりんご病に、まさか三十代後半の自分がかかるとは夢にも思いませんでした。始まりは微熱と、なんとなく体がだるいなという程度の軽い風邪のような症状でした。ところが、三日ほど経った頃、突然両方の手首と足首に激痛が走りました。朝、立ち上がろうとすると足の裏が痛くて地面につけず、ドアノブを回すことすら困難なほどの関節痛です。リウマチにでもなったのかと不安に駆られながら自分の体を見ると、腕や足の太ももに、まるで網タイツを履いているかのような奇妙な模様の赤い発疹がびっしりと出ていました。鏡で顔を確認しましたが、子どものような真っ赤な頬にはなっていなかったので、最初は別の恐ろしい病気ではないかとパニックになりました。病院へ駆け込むと、医師から告げられたのは「大人のりんご病」という診断でした。大人の場合は頬が赤くならないことも多く、代わりに関節炎と全身の激しいかゆみが主症状になることがあるそうです。そこからの数日間は、まさに生き地獄でした。かゆみの質が子どもとは違うというか、皮膚の表面ではなく、もう少し深いところが熱を持ってジンジンと疼くような感覚でした。特に夜、布団に入って体が少しでも温まると、全身が火照りだし、耐え難いかゆみが襲ってきました。掻けば掻くほど発疹は真っ赤に盛り上がり、かゆみはさらに増幅します。保冷剤を何個も冷凍庫に入れ、それをタオルで巻いて全身に並べて冷やしながら、夜が明けるのをただひたすら待ちました。仕事に行こうにも、靴を履くときの摩擦すらかゆみを誘発し、さらに歩くたびに関節が痛むため、数日間は欠勤せざるを得ませんでした。医師からは、大人のりんご病は重症化しやすく、症状が引くまで時間がかかると言われていましたが、本当にかゆみが落ち着くまでに一週間以上を要しました。処方された抗ヒスタミン薬を服用しても、かゆみをゼロにすることはできず、ただぼーっと意識が遠のく中でかゆみと闘っているような状態でした。一番辛かったのは、日常生活のあらゆる動作がかゆみを悪化させる刺激になることでした。熱いお湯を浴びる、きつめの服を着る、少し早歩きをする、それだけで皮膚の下で何かが騒ぎ出すような感覚があるのです。ようやく症状が落ち着いてきたのは発症から十日ほど経った頃でしたが、その後も一ヶ月ほどは、お酒を飲んだりお風呂に長く浸かったりすると、足にうっすらとレース状の模様が戻ってきました。子どもがかかれば「可愛らしい病気」と言われることもありますが、大人がかかった時のりんご病は、決してそんな生易しいものではありません。全身を覆う猛烈なかゆみと、自由を奪う関節痛。この経験を経て、私は自分の子どもがかりんご病の疑いがあるときは、絶対に妊婦さんや他の大人に近づけないようにしようと心に誓いました。あの絶望的なかゆみは、二度と経験したくない人生のワースト記録です。