私たちが普段、何気なく利用している日本の医療制度は、健康保険という強固な支えによって成り立っています。多くの人が病院の窓口で支払うのは、実際にかかった費用の三割、あるいは年齢や所得に応じて一割や二割といった一部の負担で済んでいます。しかし、何らかの理由で保険証を提示できない場合、あるいは保険未加入の状態にある場合、窓口では十割、つまり費用の全額を支払うことになります。この十割負担という状況に直面したとき、多くの人が驚くのはその金額の大きさです。日本の診療報酬制度では、すべての医療行為に「点数」が設定されています。例えば、初診料は二百八十八点、血液検査や胸部レントゲン撮影にもそれぞれ数十点から数百点の点数が割り当てられています。この「一点」は、健康保険制度上では十円と定められています。したがって、初診で簡単な診察を受けただけでも、点数の合計が五百点であれば五千円、千点であれば一万円が全額自己負担額となります。風邪を引いて近所のクリニックを受診し、喉の薬や解熱剤を処方してもらう程度の一般的な診療であっても、十割負担となれば、初診料、検査代、処方箋料、そして薬局で支払う薬剤費を合わせると、一万円から一万五千円程度の出費になることが珍しくありません。もしこれが、夜間の救急外来であったり、CTやMRIといった高度な画像診断を必要とする場合であれば、一度の受診で三万円から五万円、あるいはそれ以上の金額を請求されることになります。さらに注意が必要なのは、自費診療(自由診療)として扱われる場合です。健康保険が適用される診療を便宜上十割で支払う場合は一点十円で計算されるのが一般的ですが、保険適用外の自由診療として病院が価格を独自に設定している場合、一点あたりの単価が十二円や二十円に設定されていることもあり、その場合はさらに高額になります。十割負担の金額を知ることは、日本の医療制度の恩恵を再確認すると同時に、万が一の事態に備えるための重要な知識です。十割負担は決して「通常の三倍」という単純な計算ではなく、普段見えていない医療の原価をそのまま支払うことを意味します。この金額の重みを理解しておくことは、適切な保険加入の継続や、受診時の準備を怠らないための動機付けとなるはずです。
医療保険未加入時の全額自己負担額と計算の仕組み